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□鬼さんこちら
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海の香りを纏いながら
竜の右目を静かに
その左目に見据えて、
今日も鬼はやってきた。

「よう!右目の兄さん、今日も激しく愛し合おうぜ!」

「来るなああああ!」

そしてまた今日も
右目と西海の鬼は
鬼ごっこを始める。
鬼の役は言わずもがな。

ばたばたとただならぬ形相で
廊下を全力で走る小十郎。
いつも冷静で真面目な
片倉小十郎だったが
この時だけは別だった。
後ろからは笑いながらも
凄い早さで追いかけてくる
長曽我部元親。

「おいおいなんで逃げんだよ!」

「逃げなきゃヤるんだろうが!」

「当たり前だろ?」

果たしてそれは
当たり前であって
良いことなのだろうか。

とにかく捕まったら
ヤられるということを
確認した小十郎は今まで
生きてきた中でも一番の
ダッシュをした。
畑仕事や訓練で体は大体
鍛えているつもりだ。
しかしそれは元親も同じで
海で足腰を鍛えられた体は
ぐんぐんと小十郎に
追い付いていく。

「もう諦めたらどうだい!」

「っ馬鹿言うな!」

絶対に捕まるものか。
しかし年齢もあるのだろう、
小十郎はもうゼェゼェと
息も絶え絶えだ。
一方元親は笑顔を崩さず
息を一つも乱さない。

城中を走り回り
二人の罵声が飛び交う。
伊達軍はもう慣れっこで
誰も止めようとはしない。
小十郎は泣きそうになった。
もう足が限界だ。
昨日も元親にヤられて
腰がジンジンと痛む。

「っ!?」

とうとう小十郎は
力の入らなくなった足が
がくりと床に着いて
廊下に派手に転んだ。
上を見上げれば元親が
満足そうに笑っている。

「俺の勝ちだな」

「……っ」

元親が疲れきった
小十郎の体を廊下の壁に
預けさせる。
そしてその上に股がり
小十郎を抱き締めて
味わうように首筋や頬に
唇を落としていく。

「こ、んな所で…っはあ、すんじゃね…っはう」

走りまくってなかなか
治まらない荒い呼吸。
それを必死に整えながら
小十郎は元親の胸板を
震える手で押す。
しかし元親は離さない。

「心配すんなって。誰も来やしねえよ」

二人がいるのは決して
人が来ないとは限らない
廊下であった。
それを知っている小十郎は
必死に抵抗してみたが
鬼はびくともしない。

「小十郎」

大人しくしてな、と
言うように着物の隙間に
するりと手を差し込む元親。
ああ、今日も畑仕事を
することは出来ないか。
小十郎はそうぼやきながら
ぐったりと項垂れた。









鬼さんこちら

(右目の方へ)












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