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□Make Love始めました
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「Hey、小十郎」

いつもの朝。
いつもの呼び止め。
でも、なにかが違う。
目の前で笑う政宗様は
どこか爛々としている。
その意味を俺は知っていた。

「……今夜には、必ず」

「手作りな」

「無論でございます」

俺が頷くと政宗様は
甘い香りが漂うその塊が
沢山入った袋を
笑顔で俺に突き出した。
それを受け取りながら
俺は苦笑いを浮かべた。

嬉しそうな政宗様に
悪い気はしない。
むしろ、俺も嬉しい。
だが、今夜の事を思うと
俺はげんなりとした。

2月14日。
ばれんたいんでー。
なんて忌々しい行事だ。



−−−−−−−−−−−−



「あら、小十郎。また?」

「はい、姉上。またです」

昼が過ぎてガランとした
調理場に俺は姉上を呼んだ。
去年もこうして此処で
同じ会話をした気がする。
俺が腕いっぱいに抱えた
チョコレートを見て
姉上はにっこり笑った。

「愛されてるのねえ…いいわ、手伝ってあげましょう」

「ありがとうございます」

そして今年も政宗様の為に
手作りのチョコレートを
姉上と作ることになった。
甘い香りが充満する中で
何度むせ返りそうになったか
分からない。
俺も甘いものは嫌いではないが
こんな甘いのを何個も
食べられる自信はない。
まあ食べるのは俺じゃないが。



−−−−−−−−−−−−



そしてその夜。
俺は政宗様の部屋の前にいた。
手には姉上が綺麗な紙で
包んでくれたチョコレート。
なんだかいきなり
恥ずかしくなってきて
なかなか入れないでいると
中から笑いを孕んだ
掠れた声が聞こえた。

「どうした、小十郎」

気付かれていたか、と
俺は苦々しく笑って
そっと部屋に入った。
目の前で政宗様が布団の上に
座ってニコニコしながら
こっちを見ている。

「っ…チョコレート、を」

ますます恥ずかしくなって
俺はムードもなにも無しに
チョコレートを政宗様に
差し出した。
政宗様はそれを受け取ると
丁寧に紙を開いていって
現れた白い箱を開いた。

「oh、今年はcakeか」

政宗様が嬉しそうに笑う。
子供みたいなその笑顔に
思わず頬を緩めた。
姉上が南蛮の菓子に詳しくて
本当に助かった。

政宗様は一口サイズの
チョコレートケーキを
一つ食べると障子の前で
座ったままの俺に手招きした。
恐る恐る近付いてみれば
やはり押し倒された。

「っ政宗さ、」

「甘味を食べながらお前を愛でる。最高だな?」

どくんと心臓が跳ねた。
政宗様の笑顔がいきなり
大人びた気がして。

「どろどろになるぐらいに溶かしてやる」

政宗様の手が着物の隙間から
するりと入ってくる。

「どんな甘味もお前には敵わねえけどな」

その細い指先がそっと
俺の男根に触れる。
びくりと体を震わせると
政宗様が薄く微笑んだ。

「楽しませてくれよ?」

もう、止まらなかった。






 
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