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□色恋マシンガン
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「ねえねえ、小十郎さんさぁ、隣のクラスの元親と付き合ってるってマジ?」

「はあっ!?」

終礼が終わり小十郎は
生徒達がどんどん教室から
出ていくのを見ながら
鞄に教科書を詰めていると
突然隣の席である佐助に
そう聞かれた。

あまりに突然だったので
思わず大声を上げてしまい
教室に残っていた何人かが
佐助と小十郎を振り返る。
慌てる小十郎だったが
佐助が「なんでもないよ〜」と
笑顔でフォローしてくれて
なんとか視線を反らせた。

「…で、マジ?」

安堵しながらも再び
佐助が問えば、
小十郎は赤面しながらも
小さく頷いた。
その瞬間佐助は顔を輝かせて
次にはニヤニヤと笑った。

「へ〜!噂本当だったんだ〜!」

「なっ、噂になってんのか!?」

「そりゃあね。だって付き合ってんのバレバレだもん、君ら。バレンタインの日も廊下でイチャイチャしてたらしいじゃん?」

「〜〜…!」

お熱いね〜、と佐助が
冷やかすと恥ずかしすぎて
反論もできないのか
小十郎はスカートを手で強く
握り締めて俯いた。
佐助はそれをニコニコと
微笑ましく見つめていた。

ふと小十郎は顔を上げて
佐助をちらりと見た。
それに気付いて「ん?」と
首を傾げれば小十郎は
ゆっくり話し始めた。

「お前は、確か真田と付き合ってる、よな…?」

「うん。そうだけど?」

「えっと…あ、あの、な」

「うん?」

「え、ええええっち、とか…してんのかと思って…」

噴火するんじゃないかと
思うぐらいに真っ赤になって
小十郎はそう口にした。
後半からはもう声が
聞こえないぐらい。
暫く佐助はぽかんとしていたが
小十郎の聞きたいことが
だんだんと分かってきて
ああ、と笑った。

「うん。したよ?」

「っ!やっぱり…男は、したいもんなのか?」

「ん〜、そりゃあ好きな子とはしたいもんでしょ。ただウチの旦那ってすぐ破廉恥破廉恥って言うじゃん?だからいつも俺様がリードしてんだよね〜」

「そう、なのか…」

「…そんな考え込まなくても元親なら引っ張ってくれると思うよ?優しくしてくれそう〜」

「それは分かってるんだが…やっぱり…痛そうだ」

「うん。最初はね、痛いよ、かなり。俺様痛すぎて泣いたもん。元親はウチの旦那よりデカイからねえ…」

かなり痛いだろうね、と
佐助は言いかけたが
小十郎がもうすっかり
涙目で震えていたので
慌てて苦笑いを浮かべた。

「でもっ!痛いのは最初だけだしっ!ほら、元親なら大丈夫だって!」

「俺がなんだって?」

「っ!?元親…」

「小十郎がなかなか出てこねえから来ちまった」

夢中で話している間に
かなり時間が経ったらしく
元親が誰もいなくなった
教室のドアに寄りかかって
小十郎に手を振った。

「わ、悪い…」

「いいえ〜。んなことよりも猿!小十郎にあんまり変な事吹き込むなよ?」

「俺様は常識を教えてあげたの!つーか猿って呼ぶな!」

ぎゃいぎゃいと言い争う
二人に苦笑いしながら
小十郎は教科書を鞄に仕舞い
元親のもとに走り寄った。
元親は愛しそうに小十郎の
頭をぐしゃりと撫でると
手を繋いで教室を出た。

その直前に小十郎が
佐助に「ありがとうな」と
口パクで言った。
佐助はにこりと笑って
軽く手を振った。

「なんか旦那に会いたくなっちゃったな」

幸せそうな二人の背中を
見つめながら佐助は一人
微笑みながら静かに呟いた。



―――――――――――――



「元親、話聞いてたか?」

その頃、小十郎と元親は
仲良く手を繋ぎながら
家路を歩いていた。
小十郎の不安そうな問いに
元親は豪快に笑った。

「少しだけ聞いちまった。でもまさか小十郎がそっちで悩んでるなんてなあ?」

「う、うるせえな!お前の為に悩んでんだよ!」

「ああ、分かってるって。すげえ嬉しかった。でも焦らなくてもいいんだぜ?お前の準備が出来るまで俺はいくらでも待つから」

「っ…!悪い」

「謝んなって」

健気な小十郎が可愛くて
元親は背を少しだけ屈めて
頬に軽くキスをした。
それだけで赤くなってしまう
小十郎だから好きなのだ。
今はこれだけで元親には
十分すぎるほどだった。

「…元親」

「ん?」

「ありがとな」

「おう」

そんな元親だから小十郎も
心から好きになれた。
沢山のありがとうを込めて
少し先にある曲がり角で
思い切って自分から
キスをしてみよう、と
小十郎はぼんやり考えた。














(命短し恋せよ乙女!)














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