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夕刻ごろから彰子姫の様子がおかしい。
いとこ姫の一大事ということもあり気が気でないということだろうと最初は思っていたが、どうもそれだけではないようだった。
「彰子様、圭子さまのことは昌浩にお任せ下さい。あれでも晴明の孫です。」
「ええ…でも。」
どうも歯切れの悪い返事をする。
だが、このときはまだ油断していたのだ。
夕刻を過ぎると彰子姫の世話は他の女房に入れ替わる。
だが常に牡丹は彰子姫のそばにいるので異変があればすぐに知らせが来るだろう。
そう思って早苗は丑の刻が近付くまでの間少しでも睡眠を取ろうと横になった。
気がつけば丑の刻が近づいている。
東三条邸は闇に包まれ静まり返り、彰子姫の住む対屋もまたしかり。
早苗は昨日圭子姫が現われた庭の方へ意識を向けていた。
圭子姫の方には今頃昌浩が向かっているだろう。
だが、そこである異変を感じた。
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