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胸元に抱えているのは牡丹。
どうにかして主人の元へ知らせようともがいている。
正直この暗闇で一人でいるのは怖い。
とにかく昌浩に会えたら一緒に連れていってもらえると信じていた。
「牡丹、もう少し待って…」
だがやっとのことで抜け出した牡丹は主人の元へ走るように闇へ消えてしまう。
早苗に言えば絶対に反対されると分かっている。
分かっていても圭子姫のことは自分で確認しに行きたかった。
だから『賭け』に出たのだった。
牡丹がいなくなってすぐに誰かの話し声が聞こえてきた。
耳を澄ますと聞きなれた昌浩ともののけの声が聞こえてくる。
すぐにでも出ていきたいのだが戻れと言われるのは目に見えている。
うしろから様子を見ながらついていくことにした。
だが、昌浩も後ろから誰かがついてきていることに気が付き、すぐにどこかに身をひそめてしまう。
「昌浩…?」
突然のことに戸惑い、あたりを見渡しても何も見えない。真っ暗な中、風だけの音が聞こえる。
だが、その不安は身にまとう伽羅の香に気付いたもののけと昌浩によって拭われた。
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