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のろのろと視線を彷徨わせるが、ここがどこだかわからない。
たしか、彰子姫とともに異邦の妖異につれてこられたはずだ。
(彰子さまは…?)
少しずつ思いだしていく。
彰子姫の姿がないと気付き体を起こそうとするが、思うように動かない。
「ここ…き、ふね…?」
気付いたのは微かな神の気。
妖異たちの瘴気で空気は濁っているが、時折感じるそれは貴船のものに類似している。
だが、かなり弱い。
「こんなところに、いたとはね。」
ここ最近雨がなかったこともうなずける。
貴船の神はおそらく封じられてしまっているのだろう。
やっとのことで起き上がると、自分が小さな結界の中にいることが分かった。
「牡丹、、」
牡丹のつくりだす結界の周りには数えきれないほどの妖異たち。
皆、飢えた顔でこちらを見ている。
「牡丹、ありがとう。」
小さな身体は震えている。全身全霊、早苗を守る結界を作っているのが見て取れた。
あたりを見回し彰子姫の姿を探す。
そして自分よりも少し遠くに意識なく倒れている彰子姫の姿を見付けた。
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