胡蝶ノ夢

□絶対これは病気だ!
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絶対これは病気だ!


最近何だかおかしいのよ。
手に物つかないっていう状態なのかは分からないのだけれど。
ただ、仕事中だというのに頭から離れないことがあってね。
こんなに悩んでるなんて、自分らしくない!

ああああああっ??!!
もう、嫌っ??
・・・なんで?何でなの!!?
さっさと頭から出て行ってよ!
馬鹿、マタイっ!

あんなに性格に難ありの男の癖に!
策士だし、悪魔だし。
腹なんか白さのカケラも砂ほども無い真っ黒の癖に。
頭の中は策略ばっかりだし。

・・・私のことは毛程も考えてくれてないんだよ。

なのに、なんで?

・・・どうして彼の仕草ばっかり見てるの?

跳ねてばっかりいる黒髪を掻く仕草も。
手を顎に当てて考え事する時も。
意外にも紅茶には少し拘ってたりすることも。
毎日、聖書を欠かさず読むことも。
局長を一日に一回はイジる悪習慣があることも、知ってる。

いつからか、彼に頭の中を占領されていた。
もうお手上げ状態。
頭に住み着いた悪魔は中々消えてくれない。

「なにを惚けていらっしゃるんですか?聖務に集中して下さい」

いきなり背後から掛けられる棘のついたお言葉が。

「・・・っ!すみませんね、マタイ“閣下殿”」
「貴女と私の間にその敬称は必要ないですよ」

棘に対し棘で返す。
振り返ると、いつも通り彼である。
手に書類を持ちながら背後に音もなく立っていた。
レディの後ろに忍び寄るかの如く立つ事は宜しい事ではないと思うの。
どうやら彼は他人の心臓が止まろうが構わないみたい。冗談だけど。

「ああ、そうだ。貴女当てに吸血鬼(バケモノ)絡みの聖務にご招待の、お誘いですよ?」

書類の束から茶封筒が手渡される。
受け取ると意味ありげな微笑みをされる。
【極秘】と赤いスタンプが貼られ、
封の空いていない封筒。
ペーパーナイフで開くと彼の言った通りだった。
最後の文章には『尚、今回の任務はブラザー・マタイも同行する』との記載がされている。

「はぁ。」
「ふふふ、宜しくお願いします」

この男、面白がっているわ。
ニコニコと笑顔の絶えないことだわ。
私は彼にとって第2の局長か何かなのか。
イジられるのは勘弁して欲しい。
・・・嫌って程じゃないけれど。

「ー・・・黙っていれば
、いい人そうなのにね」
「何か、言いました?」
「いいえ。全くなにも。」

いつも通りのやりとりをついしてしまう。

「まぁ。貴女との聖務を頂けたのは役得ですよ」


どうやら悪魔は頭だけじゃなく胸まで締め付け始めたようだ。




END.

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