BBハザジン小説

□G斑鳩のしらべ
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まあ、予想していたことではある。しては、いたのだが……。
最後に袖を整えて一歩下がったジンは、着流し姿のハザマに思わずを息を呑んだ。
羽織りや袴まで着込むなら多少恰幅がいい方が似合うが、自分以上に細身のハザマなら着物と帯だけの着流しが似合うだろうと思って簡単に着付けたのだが――なんだこれは、驚くほど似合っていて無性に腹立たしい。
髪色と同系色でまとめた着物と角帯が、スレンダーな体形を際立たせていた。細いが骨格のしっかりした体は、柳のようなしなやかで強い印象を与える。
貧弱さが際立つかと思ったが、肩幅がある分それほど脆い印象にはならなかった。元々ある胡散臭さは本人の表情と、重心をずらした斜め立ちのせいで拭えないが、浪人街に紛れても十分違和感がない。
「キサラギ少佐? ……もしかして、見惚れてました?」
「……何でだ。眼科に行って、瞼を切開してもらえ。よく見えるようになるぞ」
全体を凝視していたジンに、ハザマが茶化すようにそう聞いてきたので、憮然と言い返した。似合っているという意味では感心したが、別にハザマ自身がどうとは思っていない。
もともと黙って立っていれば容姿はいい方なのだ……中身がアレなだけで。見映えが良くて当たり前だ。
決して自分の眼がおかしいわけじゃないぞ、と胸中で悪態をつきながら、ジンは草履を箱から出してハザマの足元に置いた。
「使い古しで悪いが、これを履け。多少こなれた草履の方が、歩き回るには向いてるだろうからな」
「へぇ……ビーチサンダルみたいな形ですね」
ジンが跪いて草履を押さえたところで、ハザマが足を入れる。奥までしっかり入れさせてから足の具合を問うと、大丈夫そうですよと頭上から返事が降ってきた。
「歩く時……特に走る時は足の指をちゃんと使えよ。脱げて転ぶぞ」
注意事項を告げながら、ジンは上背のあるハザマを見上げる。靴の時と同じ感覚で歩くと不格好になるからと思って真面目に説明したのだが、ハザマはじぃーっと粘着質な眼差しでこちらを見下ろしていた。
一体何だと思いながら怪訝な表情をすると、不意にハザマの口元が楽しそうに歪んだ。
「少佐の上目遣い、新鮮でいいですねぇ〜。今度、この体勢で私にもフェラしてくださいよ――」
「来い、ユキアネサ」
もはや問答無用で、ジンは氷剣を手元に召喚させた。流石に、我慢の限界だ。

怒りの形相でジンは躊躇いなく抜刀したのだが、慌てたように後ろへ飛んだハザマに逃げられてしまった。
「うわっ、と!? やめてくださいよ、死にますって!」
「むしろ、死ね。僕の平穏の為に」
貴様が存在しているだけで不愉快だ、と舌打ちしながらジンは吐き捨てた。正直、我ながら耐えていた方だと思う。こんな不埒な輩相手に。
もう知らん、コイツ殺す、と完全に怒り心頭きたジンは二度目の攻撃を撃ち込もうと、刀を構えたまま一歩踏み込んだ。
「ちょ、少佐ッ! 眼がマジですよ、眼が!」
「安心しろ、首を飛ばせば一瞬で済む」
「何の安心です、それ!?」
非難めいた声をあげながらハザマが後退するが、ジンは構わず追い詰めていく。
もう許せん。人が真面目に相手してやってるというのに、この男は……!
ギリギリ奥歯を噛み締めながら睨むジンに本気を感じ取ったのか、ハザマは蒼白になって玄関先へと一目散に逃げて行った。
「えーっと、着付けしてくださって有り難うございました少佐! ではまた、後程〜」
「二度と来るなッ! 今度目の前に現れたら、刺し殺してやるから覚えておけ!」
一足先にドアの隙間から外へと出て行ったハザマに、ジンは怒号を浴びせながら腹立ち紛れにドアを蹴り飛ばした。恐らく近隣に住む同僚達には、一連の騒動が筒抜けだろう。
嵐が去った後の静寂の中、ジンは壊されてて地にとぐろを巻くチェーンに視線を落とした。思わず片手で顔を覆い、唸る。
……引っ越し、しようかな……。
イカルガの英雄は、一人のどうしようもない部下のせいで、朝っぱらから本気で悩み始めたのだった。






END





イカルガ関係、捏造まみれです。公式発表がまだだから、許してね★

ハザマは結局もとのスーツをジン宅に置いて行ってるんで、夜に取りに来るんですが……着物プレイに発展しそうですね。書いたらただのエロばっかな話(まさに山なしオチなし意味なし;)になりそうだったので省きました。



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