BBハザジン小説

□Dプレゼント強奪作戦
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「やっぱりこれですよね〜。どうです? 美味しいでしょう?」
「……マズくはない」
食卓に着いてから、ハザマは饒舌に喋り通しだった。
ただのトーストにドレッシングをかけただけのサラダ、そして茹で卵。こんな何の変哲もない質素な朝食に、よくそこまでテンションが上がるなと不思議に思ってしまうくらい、美味しいですねと繰り返していた。
誰が焼こうがトーストはトースト。ドレッシングをかければ大抵の野菜は食べられる。普段の外食とは比べものならないそれらを、嬉しそうに頬張る心境はジンには理解できなかったが、確かにハザマが作った茹で卵は程よく半熟でしっとりしていた。
「2つ目、食べます?」
「いや、いい」
綺麗に剥かれた真っ白な卵を差し出して、ハザマがにこにこと笑いかける。笑顔の圧力に押されかけながら、ジンは首を横に振った。それなりに美味しいのは認めるが、流石に何個も食べたいと思うものではない。
断ると残念そうにハザマは眉根を下げ、差し出していた卵を自分の口元に持っていった。既に二個は平らげていたので、三個目だろう。ぱくぱくと簡単に食べてしまう姿には感心するが、コレステロール値が跳ね上がりそうだなと思った。
「……ところで、少佐。誕生日の件ですが」
「ん?」
あらかた食べ終わり、紅茶を啜っていたところで、ハザマがまたもや誕生日の話を振ってきた。嫌な予感に眉をひそめてハザマの顔を見ると、胡散臭いほど爽やかな笑みを浮かべて両手を差し出してきた。
「何かプレゼントください☆」
「……貴様、これ以上何をたかる気だァ!?」
厚顔無恥も甚だしい発言に、ジンはマグカップをテーブルに叩き付けた。
不法侵入した輩に朝食を出すという寛大さを披露したというのに、この男は……!
制裁を加えたことは棚に上げ、ジンはハザマを思い切り睨みつける。
「もう十分、相手をしてやっただろう! これ以上何が欲しいんだ、貴様」
「形に残るものであれば、何でもいいですよォ〜。少佐から貰ったってことが、嬉しいんですから」
怒鳴り付けたというのに、返ってきたのは驚くほど柔らかい笑みだった。予想外の言葉に、思わず呆気に取られて、瞬きをする。
何を言ってるんだ、コイツ……?
まるで家族か恋人にでも言うような台詞に、ジンは思考が混乱した。

どういう意味で言ったのだろうか。この男のことだ、文面通りというわけではあるまい。……いや、そのままの意味なのだろうか?
勘繰るべきか素直に聞くべきか判断に迷っていると、ハザマが御馳走様でしたと言って立ち上がった。帽子とコートを手に取り、いつものように身に纏うのを見て、ジンは戸惑う。
「多忙な少佐の休みを、あまり削ってしまうのは気が引けますので、この辺りでお暇させて頂きますね〜」
「え……」
急に帰り支度を始めたハザマの行動が理解できず、ジンは腰を浮かしかけた。中途半端に話を振られて、一方的に打ち切られては気持ち悪くて仕方ない。
しかし出口へ向かいかけたハザマが振り返り、微笑みながら言った言葉に、話は終わっていなかったのだと思い知らされた。
「では明日、また本部で会いましょう。……あ、ちなみに余談ですが、シルバーアクセサリーが好きなんですよ私」
……それは、プレゼントに寄越せという意味か!?
遠回しに要求してきたハザマに、ジンは顔を引き攣らせるしかなかった。












翌日、昼食を誘いに来たハザマに、ジンは小さなシルバーチャームを投げて寄越した。
なんで僕がこんなこと……と苛立つ気持ちも強かったが、プレゼントを受け取ったハザマの顔が引き攣ったのを見て、少し気分が晴れた。
デスクに肘を付いたまま、ジンは停止しているハザマを横目で見る。
「誕生日オメデトウ、ハザマ大尉」
「少佐……」
棒読みの祝いの言葉を口にするが、ハザマは困り顔で手元に視線を落としていた。
そこには、よく磨かれた可愛い猫のシルバーチャームがあった……。




END





ギリギリ、ハザマ誕生日祝い。
半ばカツアゲ。

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