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□IMITATION BLACK
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「初めまして」
俺が楽屋にはいると、すでに残りの2人はいた。
ミュージシャンの、『カイト』さんと『がくぽ』さん。
2人とも、プロのミュージシャンで、とっても歌が上手い。
そんな2人に、何故俺が会えたか、というと
双子の姉、リンが気まぐれで応募したオーディションに俺が受かってしまったからだ。
元々、プロのミュージシャンを育成するために開かれたオーディションで。
ついノリで受けてみたら見事合格してしまったのだ。
実際受かる気なんてさらさら無くて、もっと他に上手い人がいるんじゃないか、と思う。
オーディション中も、歌が上手い人なんて沢山いたし、俺なんかより夢を掴みたかった人の方が多いんじゃないか。
生半可な気持ちで受かった俺より、本気で受かりたかった人なんて全国にいるのに。
そんな複雑な思いを胸に、俺は顔を上げた。
カイトさんとがくぽさんはもう衣装に着替えたらしく、黒を基調とした服を身にまとっていた。
テレビで見るより何倍も格好良くて、つい引き寄せられそうだった。
2人の顔を見つめていたらしく、カイトさんは俺に話しかけてきた。
「あの、鏡音レン君?」
「あ、初めまして、カイトさん!
俺は、鏡音レンです。
今回一緒にバンドを組ませて頂きありがとうございました!!」
少し一気に話すぎただろうか。
カイトさんは俺の心を察したのか、にこりと笑いかけてくれた。
「緊張しなくても平気だよ。
あっちにいるのはがくぽね。話し方に時代かかってるけど、良い奴だから」
「はい、今日はお願いしますね!!」
俺があいさつを返すと、カイトさんはやっぱり笑ってくれた。
そして、後ろを振り向きがくぽさんに声をかけた。
「がくぽもちゃんとあいさつしないと!ほら!」
カイトさんが呼びかけると、がくぽさんはこちらに顔を向けてくれた。
「うむ、そうだな。
レン殿といったか。以後よろしくでござる」
「あ、はい。よろしくお願いします!」
そして、間もなくスタッフさんが入ってきた。
『3人〜、撮影始まるよ〜』
「あ、着替えなきゃ!!」
そして俺は自分だけ着替えていないことに気がついた。
「じゃあレン君、僕とがくぽは先に行ってるから、着替えたら隣のスタジオに来てね」
「はいっ、すみません」
俺は急いで着替えてスタジオへ向かった。
でも、流石にキツかった。
黒いワンピースに赤い薔薇、それは紛れも無い『女装』。
14年生きてきて、初めての屈辱を味わった。