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□狭い空間
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僕の恋人である、零崎人識はちょっと変わった奴だ。


顔面に刺青なんてしてるし、耳にピアスもしている。

しかも、安全靴なんかを一部の『ファッション』として扱っている。

センスは、最悪…。

でも、でも、でも、一番酷いのが…


『人殺し』を『日常』として扱っているところ。


零崎、っていうのは特殊な集団だと、人識は言っていた。

血の繋がらない家族……。

別に、それは構わない。

それで人識を嫌うわけでもないし。

僕にとっては唯一無二の鏡だから。








そして、今の状態はというと。


血の匂いを漂わせたままの人識が僕のアパートにいる、という状態。


「…人識、人殺して来たの??」

「あぁ」

「なんで殺したの??」

「分かんねぇ」

「理由は、何」

「…………。

 なんか、急にイライラして」

「……そう」


人識はこの後、こんな事を言った。


「なんか、急にさ、イライラし始めて。

 んで、近くにいた奴殺した。

 でもさ、なんでかイライラ収まんなくてさ。

 そしたら、お前の顔が浮かんだ。

 んで、此処に来た。

 んで、気づいた。

 お前に1週間会ってなかった」

1週間。

それだけで、イライラするのか。

ただ単に僕に会いたかった、というだけだった。

なんで。

なんで、会いたかったんだろう。


「零崎はさ、なんで僕に会いたかったの?」

「愛してるから」

「……………………」


そして、零崎は、自分が座っていたところを離れ、僕に抱きついてきた。


僕の首に手を回し、いつも以上の力を入れて抱きしめてきた。

僕は、それに返すように、零崎の背中に手を回した。

「いーたん」

「何」

「愛してる」

「知ってる」

「いーたん」

「何」

「好き、好き、大好き、愛してる」

「…僕も」

そんな会話を永遠繰り返した。

しばらくたって、零崎は僕から離れた。

そして、玄関から出て行こうとした。

「これ以上いると、死神がうるせーからな。

 いーたん、1週間以内にまた愛を確認しに来るから」

「あっそ」

「いーたん、愛してるぜ」


僕の声を聞かないまま、零崎は出て行った。
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