●怖い噺 五
□叩かれるドア
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仕事で地方行く用事が出来て、時間の関係で前の晩に新幹線乗って一泊することになった
で、同僚と話してるときに予約したホテルの名前いったら「お前知ってる?そのホテルってさあ」とか話し出してそいつはその手の話大好きで俺すっげえ臆病だから絶対聞きたくなく「バカやめろよ言うなよ。言ったらぶっ飛ばす」って慌てて遮ってそのときは聞かずに済んだんだけど
でもそいつのお陰でホテル着いた後も妙に気味悪くって。どうせ一泊しかしないんだからさっさと寝ちまおうと思って布団入ったんだけど俺くらい臆病な奴なら分かると思うけどそういう時って一回恐いって思ったら終わりなんだよね
寝るのも起きるのも身動きするのも嫌で、もう朝になるの待つしかない。そんで布団の中でいろいろ考えて、何故かそのときは死ぬのが異様に恐かった
ずっと死ぬことばっかり考えて、いやだ恐い死にたくねえでもいつか死ぬ誰か助けてってもう本気で寝るの諦めてどっかの飲み屋でも行って時間つぶそうと思い始めたとき
ドンドンドンドン!!
って部屋のドア叩いてるんだ心臓止まんなかったのが不思議なくらいビビッた
ドンドンドンドン!!
幽霊?火事?知り合い?なんか事故でもあったのかとりあえず電気点けてでもドア開けるのは恐くて「なんですかー?」って答えてみたら叩く音はピタッとやんでそのまましばらく身構えてたけど何にも言ってこない
もう寝れる状態じゃない財布と電話確認してなんとなく身仕度して(寝巻だけど)ベッドの上に起き上がってじっとなんか待ってた。しばらくしたら
ドンドンドンドン!!
ってまた叩く音がして、
「なんかあったんですかー!?」でも返事は無い。本当に緊急ならホテルの人間が何か言ってくる筈だ。鍵も開けられるだろうし部屋の電話も携帯電話もある。なら大した用事じゃないのか?でもさっきからの妙な気分は引き摺っててとにかく恐い
ドンドンドンドン!!
フロントに電話しようと思ったけど電話を見たらそういう他人とのコンタクトがすげえ不安になってきた。言っても通じなかったらどうしよう。てかなんか変なのが電話出たらどうしよう…そんで
ガチャガチャガチャ!!
ノブ回してるよ入って来る気だよどうしよう、どうしよう。ビビりまくってでもベッドの上から動けなくてとにかく早く朝になれと思った
ドンドンドンドン!!
ガチャガチャガチャ!!
イタズラか?近くの部屋に頭おかしいのが泊まってんのか?早くこの時間が終わることだけ祈って空が白くなってだんだんドアを叩く音の間隔が長くなり、とうとうやんだ
仕事で朝早いのが救いだった。フロントに電話してチェックアウトしたいって言ってあとは普通
仕事して家に帰った。そんで前にホテルの話しかけた同僚つかまえて
「あそこ何かあったのか?」って聞いてみたら数年前に火事があって大した火じゃなかったんだけど一人死んでそれから出るとか出ないとか
まあ、そういう話だよ
「ドア叩くんだろ?」
「何で知ってんの?もしかしてお前見た?」
「うん」
「へー、何号室よ」
つまんなかったかもしれないけど俺の中では最高の怪談です
あの夜を過ごした恐怖は一生消えない
そもそもそいつは何で死んだか
逃げ遅れたんだけどさ単純にパニックになってたか壊れてたか知らないけど部屋の鍵が開けられなくて
だから
「やっぱ幽霊だったんだな開けなくて良かった」って漏らした俺に同僚は言ったよ
「なんで?そいつ部屋の中から外に出たくてドア叩いてたんだろ?」
−終わり−
部屋の内側からドアを叩いていたんだね
いわく付きの部屋…僕が前に修学旅行で泊まった旅館も出るって噂があって…掛け軸の裏に御札が貼ってあって
帰り際に次に来た人がソレを見つけて怖がると可哀想だから剥がして来たよ
僕って親切さん♪