●怖い噺 六


□まとわり付く女
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私は数年前まで名古屋に住んでいたのですが、名古屋の歌舞伎町と呼ばれる歓楽街があります

昼間と夜では全く違う顔を持つそこですが、その丁度中間時、夕方に友人と歩いていた時のこと(買い物かなんかしててたまたまその辺を歩いていた)

正面から来るカップルが異様にベッタリくっついて歩いていたのでかなり目をひきジロジロと見てしまいました

男の方はスーツを着た一見普通な感じ、女の人の方も多少若作りな印象ですが最近のオネエ系みたいな格好でその男に女が横から首に手を回してがっしり抱きついて歩いていたのです

「うわあ、あんなにくっついてたら歩きづらいだろうに」と思い隣にいる友人に報告しようと思ったらその女と目が合いました

あまりにジロジロ見てた為に不機嫌な感じでキッと睨まれました。気まずくなって私はそれ以上見ることも友人に話すこともやめました

その日の夜、夢にその女が現れたのです。私の部屋のテーブルを挟んで私と女は向かい合って座っており、女は私に抱きついていた男の怨み辛みをグダグダと訴えてきます

その男の為に体を売ったりしてまでお金を作ったのに裏切られたとか、子供を何人も堕ろしたとか云々

嫌な夢を見たなあと思って目覚めたのですがそれから毎晩夢に出てくるようになりました

私の代わりにあの男に復讐して欲しいとかなんとか。その夢を見た時は、女はもうこの世にいないだと思ったのですが直感的に生霊ではないかと思いました

そしてそれは何度目かに夢に女が現れた時に確信になりました。復讐なら自分でやれと言うと自分は施設に入院していて出られないとかなんとか言うのです

もう面倒くさいやら迷惑やら気持ち悪いやらでうんざりしてしまいました。しかも起きた時やたらと頭が痛いのです

そんな折、いつもの様に一人で買い物に出かけると道に迷ってしまいました。私はもともと方向音痴でしかも田舎者なので名古屋の街中にはよく迷うのでそこまで慌てずに、コンビニで道を聞いたりしながら軌道修正に取り掛かりました

すると、あの男に出会ってしまったのです

その男は開店準備をしているクラブ(キャバクラ)のお店の業者さんと色々打ち合わせをしている感じで忙しく店から出入りしていました

そういう店の経営者の様です

驚いたというか、それまでの経緯もあって立ち止まって見入ってしまいました

その時、その店の隣にある店との間に乱雑に積まれたゴミの中に例の女がいることに気づき慌てて来た道を戻りました

あの男の所へ誘導されてしまったのだろうか知らない間にあの女に体を乗っ取られてしまうのではないだろうかと物凄い恐怖に襲われました

その日も女は夢に出てきました

何故ようやくアイツに出会えたのにとか色々言ってくるので

「うるさいなあ!他を当たってくれる!迷惑!」と言って女を張り倒しました

それが効いたのでしょうか?それ以来女が夢に現れることはなくなりました

しかしそれにしてもあの女は何故私なんかのとこにきたのでしょう?

そして今もあの男にくっついて移動してるんでしょうか?

−終わり−

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