●怖い噺 七


□先客
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夏の話

私達は毎年決まったメンバー(男5人3人)で夏になるとよく飲んだり遊んだりしていました。そして特に暑い夜だと母校の中学校へ忍び込んで闇プールなんかもしたりしていました

いつだったかは覚えてないのですが8月中頃だったと思います。その日の夜に闇プールすることが決まって9時頃友人宅に集合しました

ここで私をA(女)体験した友人をB(女)もう一人をC(男)とします

友人宅には私を含め5人集まっており世間話をしたりテレビを見たりしていました。あとの3人はそれぞれの理由で遅れてくるようです

Bは12時までバイトでそこから真っ直ぐこちらへ向かうということでした

怠惰な時間が流れもうすぐ日付けが変わろうという時、誰かが言い出しました

「なあ、あいつら(まだ来ていない3人)に待ち合わせ場所中学校って言わねえ?」

暇を持て余していた友人達はすぐその話に食いつきました

3人に「もう中学校来てプール入ってる」とメールを送りました

しばらくすると友人の携帯にBからの着信が入りましたが周りの友人が「出るな出るな」
と笑いながら制しました。他の四人の所にもBから着信がありましたが皆ただ笑うだけ(今思うとひどいな)

最後に私の携帯に着信が入りました

そこでふと思った

中学校は小高い丘の上にあり周りは林で囲まれ家もなく夜中になるとあまり車が通らないとても閑静な場所にあります

そんな中を女の子一人が歩いているというのはとても危ないんじゃないか?もし何かあったら…

急に心配になり私は電話に出ました

『あ、中学校着いたよ。』

「今どこにいるの?」

『武道館側の校門。もうプール入ってんの?』

私の隣りで会話を聞いていたCが「もう入ってるから早く来いよ」と割り込んで来て通話が終わりました

誰かが中学校へ行く前にコンビニ行きたいと言ったので私達は2人(迎え組)と3人(コンビニ組)に分かれました

私はCの車に乗って二人で中学校へ向かいました。集合した友人宅から中学校はとても近く三分程で着きました。しかし車内から校門を確認してもBの姿はありません

もしかしたら違う校門では?と、外周を囲む歩道や敷地内にBの姿を探しながら車でゆっくり進んでいきました

門は全部で三つあり私達の行った門は一番下の門でした

そして直線の道路の中頃まで進むとその先にBらしき人の後ろ姿を見つけました。少しスピードを上げて近付くとその背中は角を曲がりました

車もその角を曲がりBの横に止まりました。するとBはこちらを訝しげに見やりまた歩き出します。あれ気付いてないのかな?と思い電話をかけるとBはすぐに出ました

「着いたけど…」

『あ、うん。わかるわかる』

しかしヘッドライトに照らされたBは校庭の方を見ていました。再びCはBの横に車を停め窓を開けてBを呼びました。ようやく気付いたBは驚いた表情でCを見ています

「おまえ無視すんなよ」

「あれ?Cだ」

「気付いてなかったのかよ!…まあ!早く乗れ」

「え?なんで?」

「皆コンビニにいるんだよ」

「はあ?だってAがあそこにいるじゃん」

私とCは思わず顔を見合わせてしまいました

会話が噛み合っていない。だって私はここにいる。彼女は誰の事をいっているのでしょうか?

「B!あたしここにいるよ!?」

「………え?じゃあ、あれは?」

素頓狂な声を上げたBに私は底知れぬ恐怖を感じた。Cも同じだったに違いない。Bに急いで乗るよう促してCは車を発進させた

私達以上に状況が理解出来ていないBに私は集合場所が変わったというのは嘘で他のメンバーはコンビニで待機しているということを説明した

Bはその嘘に怒る様子もなく黙って聞いていた。そして先程の出来事を話出した

中学校に着いたBはとりあえず私達の携帯に電話をした。しかし誰も出ない。皆プールに入っていて気がつかないのかな?と思い最後私に電話をかけると電話に出て「もうプールに入っているから」と聞き電話を切った後に敷地内に入ろうとした

目の前の門はなぜか少しだけ開いていたらしい(人間が一人通れる位)

(ちなみに私が見た時は閉まっていました)
そこから入ろうとして、ふと思いとどまった。静か過ぎる。水音も声も聞こえない。前記にもあるように周りはとても静かで少し遠くの音でも良く聞こえます

Bは敷地内に私達の姿がないか確認しながら足を進めた

二つ目の門を過ぎた頃校庭の奥にあるプールから誰かが出てきたのが見えた

そこをゆっくり下りて、こちらに向かってくる人がいてBはそれを私だと思い手を振ったが向こうは無反応でどんどん近付いて来る

一番上の門から少し左に小さな金網の扉があるのですが彼女はそこから中に入ろうと考えた

すると一台の車が近付いてきて横で止まった。Bはそれを私達と知らないので「?」と思いさっさと中に入ろうとした所で私から着信が

Bはこちらに近付いてくる人の方を見ながらすぐさまそちらに向かおうとしたらしい。そこでCに声をかけられ助手席に乗る私に気付き驚いたと

淡々と話すBに私はおぞけが走った

もし私が電話に出なかったら?
もしBが敷地内に入っていたら?

コンビニに着いて先程あった出来事を皆に話すと私達は急いで残り二人に場所変更のメールを送った

ほっと一息ついてから友人の一人が「Bの見間違えか、先客じゃねーの?」と言ったがリアルタイムでBのあの様子を見ていた私とCは即座に否定した

後者だったとしても夜中に一人でプールから出てきたなんて明らかに普通じゃない

とりあえずもう一度中学校へ戻って確認してみようという話になりCの車に乗り込んだ時だった

ハンドルにもたれてCが前を見据えてたまま発進しようとしない

「どうしたの?」

「いや、あのさ……これって……」

Cが指差した先

フロントガラスの右下にくっきりと手形が

しかも手をつけてからそのまま下にずらしたような5本の指の痕

内側からついたそれをCは顔をしかめながら拭き取った

間違ってついたんじゃ?と言ったがCは「こんな所腕伸ばさなきゃ触れないし、第一触らねえよ!」と怯えていた

その後Cはコンビニで塩を買って車にまいていました

結局その日は最初集まった友人の家で飲み明かして解散しました

−終わり−

夜のプール良いねぇ
怪談にはもってこいのスポット♪

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