●怖い噺 七


□触れてはいけないもの
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中学の時の修学旅行で京都へ行った

夕食、風呂も終わって旅館で寝るまでの自由時間を楽しんでた時だった。俺は右隣の部屋に良い連中がいるので遊びに行った。飽きはじめた頃、誰かが怖い話をしようぜなんて事を言った

部屋の明かりを消して中央に10人ほど集まり、1人目の話が始まった。2人、3人…4人と話は進んで行き次はAの番だった

A『安い旅館や修学旅行で使われる部屋ってでるんだよな!御祓いの為にお札が絵やツボの裏、押し入れの中に貼ってあるんだってよ。探してみようぜっ!』

怖い話を期待してたのでシラケつつ部屋中の捜索が始まった。実際にあったらあったで面白いし何よりありそうな感じがした

絵やツボの裏側、押入れの中はもちろんテレビの下などあちこち探したけど結局何一つ出てこなかった

そのうち、どこかの部屋で始まっていたマクラ投げが伝染してきてこの部屋でもマクラ投げ大会が始まった

だんだんエキサイトしてきて布団を投げ始めたりプロレスごっこになったり修学旅行の夜というのを満喫していた

A『おっ?』

少し遊び疲れた頃、Aが天井にある点検口を見つけた。そこの旅館はなぜか部屋の端っこの天井についていた

Aは悪いやつじゃなかったが、ちょっと度が過ぎてしまうタイプだった

A『おぃ、あんなか入って見ようぜ!隣の部屋まで行けるんじゃね?』

暗所、閉所恐怖症の俺は断固拒否した。他の連中も疲れただの汚れるだので拒否してた

A『なんだょ、じゃ俺が入ってみっから馬になってくんね?』

3人で2段の馬を作りAが点検口を開ける。スムーズには開いたがパラパラと埃が落ちてくる。たぶん長い間使われることが無かったんだろう。開いたその先には真っ暗な空間が広がっている

A『なんだよ、くれーなー』

Aが中に頭を突っ込んでしゃべってる。中が明るいとでも思ったのだろうか

A『あ…』

何かを見つけたのだろうかA男声を漏らした

A『おぃなんかあったぞ!』

と言いながらAは両手を穴の中にあげたまましゃがんで頭だけを暗闇の中から出した

穴が小さいため手に持っているものと頭を同時に出せなかったんだろう。手をゆっくりと暗闇の中から明るいこちらの世界へ戻す。手に持っているものが見えたときその部屋の中にいる人達の動きが一瞬止まった

A『うゎぁぁ!なんだこれ!』

天井裏は暗くてAにはそれが何なのかまったく分からなかったんだろう。分かっていればそれを取ろうなどとは考えもしなかっただろうに

Aが天井裏から見つけた物は、赤い柄のついた和紙でできた折り人形、御札、それと小さな赤い本だった

長い年月置かれていたからなのか、人形の表面はほこりで黒く汚れ、御札はかろうじて文字が読める程度にまで古びていた。小さな赤い本はポケット辞書ぐらいのサイズで赤黒くなった表紙にはなにやら文字が書いてあった

Aは驚いた拍子なのか、わざとなのか周りにいた人達にそれらを投げつけた。もちろん誰も受け取ろうとはせず本はバサっと畳の上に落ちた

人形は和紙で作られていたせいかヒラヒラと舞い落ちて部屋の隅のほうへ落ちて行った

片方の手と足を畳にもう片方の手で壁をささえ偶然なのかナナメに立った。御札もヒラヒラと舞い落ちて人形のあとを追うように畳に落ちた。心なしか人形はAを睨みつけているように見えた

Aは馬から飛び降りて再び人形を手に持ちまた俺たちに投げてきた。たぶん自分でもやばいと思ったんだろう。その気持ちを誤魔化すかのように静かになったその部屋で半笑いで人形や本を投げつけてきた

A以外誰も言葉を交わさない。引きつった顔で人形と本から逃げまくる俺達

B『それ、やべーから元に戻せって!』

他『うん、うん』

ついにBが口を開いてそれらを元の位置に戻すように提案した。Aもすぐに元に戻すことに賛成した。Aは人形と御札と本を拾い軽く埃を払ってごめんと呟いて天井裏の元の位置に戻した

テンションも下がり就寝時間も近かったためみんな各自の部屋に戻っていった。俺は隣の部屋Aはさっきまで遊んでいたあの人形のあった部屋だ

すぐに消灯時間は過ぎ先生達が見回って部屋の電気を消させた

部屋の入口のドアは少し開けられていて廊下の明かりが差し込む

たぶん、しゃべったりしてる生徒を見つけやすいようにしたんだろう。先生達が廊下をパタッパタッと行ったり来たりする足音が聞こえる

廊下の明かりと先生達が見守ってくれているという安心感からか先ほどの人形の出来事を忘れてすんなり眠りにつけそうだ

パタッ…パタッ…パタッ…パタッ…パタッ

先生の足音を聞いているうちにウトウトし始めて俺は深い眠りについた。寝始めてどれくらい時間がたったのだろうか

『ドンッ!』

と地響きのような音でハッと目が覚めた。夢かと思ってドキドキしながら2回目の音が聞こえるのを息を殺して待っていた。おそらく同室の連中もそうだったに違いない

すぐに『ドンッ!ドンッ!』

と1回目と同じくらい大きな音が鳴り響いたのと動じに叫び声が聞こえる

ドンッという音と叫び声はどうやら隣の部屋からのようだ
廊下からS先生の『どうしたっ!』っという声とAの叫び声のような物が聞こえてくる

俺たちはあわてて部屋を出て隣の部屋に駆け込んだ

部屋の中はすごい光景だった

Aが目をちばしらせ壁に向かって手足を振り回してた

まるで壁から出てくる何かに必死で抵抗しているように見えた

A『やめろー!くるな!くるな!』

S先生『おいっA!しっかりしろ!』

A『手が!手が!手が!壁から手がーっ!』

すぐに他の先生達が駆けつけAを取り押さえた。Aは押さえつけられながらも叫びながら必死で何かに抵抗していた

見ている俺らも怖くなるぐらい暴れ叫んでいた

S先生『おいっ!救急車を呼べっ!』

誰が救急車を呼んだのか知らないがすぐに救急隊員がタンカを持って入ってきた。タンカに載せられて縛られてもAは暴れ続け失禁までしていた。そのまま救急車で運ばれていってしまった

S先生『さーもう全員寝るんだ!あいつは悪い夢でも見たんだろう』

部屋から生徒を追い出し各自部屋に戻って寝るように言った。もちろん、あんなのを見てしまったからには寝られるわけが無い

俺たちは部屋に戻って皆が落ち着きを取り戻した頃にS先生を呼び出した。そしてAが屋根裏から人形などを見つけて投げたりして遊んでしまったことを伝えた

S先生『そんな事は関係ない。あいつは夢遊病か何かなんだろう。お前たちも気にしないで寝ろ。一応、旅館の人にその天井裏の人形の話はしといてやるから。』

と言い、すぐに部屋を出て行ってしまった。
しかたなく俺も布団に入った。怖くて壁や天井は見れなくてガタガタ震えながら布団をかぶって朝を待った

翌朝もちろんAの姿はない。朝食後、部屋を出る準備をしている時に俺のクラスの生徒は全員集まるように指示された

集まる場所はAのいた部屋だった。担任はすでにいて部屋に入ると端から順番に正座をさせられた。昨日の事を起こられるのかなと俺は思っていたんだがどうやら違ったようだ

生徒が部屋に入った後ぞろぞろと旅館の従業員さん達が入ってきた。そしてそれに続いて白装束を来た神主さんらしき人が3人入ってきた

そして全員手を合わせて目をつぶるように言われ言われたとおりにお経のような物を唱えた。御祓いのような儀式は2時間ぐらい続いた。その後、何事も無く修学旅行も終わったんだがAが修学旅行に復帰することはなかった

学校が始まってもAは戻ってこない。担任の話では別の学校に転校したとの事

噂では精神異常者となり精神病院に入院してしまったとか

Aの自宅も引っ越してしまい。Aの消息はまったく分からなくなってしまった

その後考えてみると不思議なことがあった

・だれが救急車を呼んだのか分からなかった(先生が生徒に聞いたが誰も呼んでない)

・救急車が来るのが異常に早かった

・救急隊員の顔が見えなかった(なぜか黒くて見えなかった)

・誰も救急車に連れ添っていかなかった

あの部屋で何があったのかなぜ人形と御札と本があったのかはみなさんの想像に任せる

あの救急隊員は人間だったのか

−終わり−

僕は修学旅行先の旅館の御札を他の人が怖がるといけないから剥がして来ました
僕って親切さん♪

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