●怖い噺 七


□結界
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うちのじいちゃんは土地持ちで畑や田んぼや山を持っています

じいちゃんは関東T県のT市と言うところに住んでいて、そのT市はものすごいど田舎でじいちゃん家の周りは180°田んぼでした

私の父が長男なので私たち一家はじいちゃん家に行くことが多く、私なんかはじいちゃんの山を小さい頃からよく登ってました

じいちゃんの山は買った山が一つと、じいちゃんの二代前から持っている山の二つで、私がよく登ったのはじいちゃんが買った方の小さめな山でした

ここまでが前置きで、話は私が小学校中学年か高学年の時のことです

長年同じ山ばかりで遊んでいた私は別の遊び場を欲しがっていました

一緒に山に遊びに行ってた一つ上の姉も同じ様に思っていたらしく、私たち二人はじいちゃんのもう一つの山に遊びに行きたいと思っていました

前に麓から見たことがあり、買った方の山の二倍くらいの大きさで木々も鬱蒼としており探検にはもってこいだと言うことで
じいちゃんや父親から危ないから行くなと言われていたのをきかずにある日姉と山まで向かい探検を始めました

その山は昼間なのに木々の影で薄暗く感じて、気味悪いながらも冒険心をくすぐり奥へ奥へと足を運ばせます

迷わない目印に姉がチョークで木に一本線を書いていたのを覚えています

山を4分の1ほど登った頃でした、姉が前方を指差し「家を発見!」息切れた声で軽快に言いました

怖い話なんかが姉妹で好きだったのでボロボロの空き倉庫や古トンネルなどに肝試しに良く行く私たちには恰好の肝試しスポットを見つけた喜びが走りました
「入ってみようよ」
「鍵かかってないといいね」
私たちはそんなことを話しながら早足にその家に向かいました

その途中、私は木と木の間(木の上の方)に縄のようなものがかかっていて、何本かと繋がっているのを見つけましたが気にせずに姉の後ろを小走りでついていきました

その家の周り4・5メートルには木が無く
そのかわり背の高い草が生えていました

草を掻き分け家を目の前にすると、遠くで見たときと比べ異様に威圧感というか重圧感というか、そんな感じの雰囲気がありました

姉は感じないのか、ずんずんと進んでいってドアとおぼしきところでガタガタとし始めました
「だめだ、鍵閉まってるや」
姉はそう言ってため息を漏らしました

私はその時、内心「良かった」と思い安堵のため息
「窓とかないかな?」
姉はそう言うとまたずんずん別の方へ回り込んで行きます

私は独りになるのが嫌で姉を追いかけようとしたときでした

背の高い草の隙間に黒い人の頭のようなものがゆっくりと移動しているのが目に入りました

………!
私は立ち尽くしてその移動する頭を凝視していました
そうしてる間に姉が回り込んでいった私のいる側とは反対の家の陰の方へゆっくりと移動していきます
私は姉に危機が迫っているのを全身で感じ、勇気を振り絞ってその移動するモノとは逆回りに姉のいる方へ回ろうとしました

すると「いや〜、やっぱそううまくは鍵あいてなかったよ」

私は何も言わず姉の腕をつかみ走り出しました
振り向かないで走って縄のかかった木をくぐり抜けてまだ走りました

その時戸惑いながら後ろを振り向いた姉が悲鳴を上げる
姉の悲鳴に私も思わず後ろを振り向いてしまいました
さっきの移動するモノがまだゆっくりと家の周りを回るように草のなかを移動している

草の薄いところをそのモノが通ったとき私も悲鳴をあげました

異常な程に髪の毛が長く多く、髪の裾から子供の脚のようなものが出ている髪の毛のおばけみたいなのが見えたんです

私たちは発狂せんばかりの心持ちで逃げました
チョークの目印を辿り息を切らせて麓まで降りました
下りとは言えあの距離を全速力で走ってこれるなんて火事場のバカ力とはこのことだと思います

その後家に逃げ帰り父親に泣いて事情を説明すると父親は真剣な顔で話し始めました

「お父さんも、その家の近くまで行ったことがある。なんでか木に縄がかけてあって、家の周りを円状に囲んでて怖くてお父さんはそれ以上家に近づけなかった。」

私は話を聞いてますます震えました

縄がかけられているのは結界であの髪の毛おばけは、あの結界から抜け出したくて草の中をぐるぐるとまわっていたのかもしれません

じいちゃんが亡くなった後、その山は手放してしまいましたがまだじいちゃん家から20分くらいで歩いていける距離にあります

−終わり−

誰がどんな理由で結界の中に閉じ込めたのか…

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