●怖い噺 拾


□忘れ物ノート
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友人に聞いた話

友人が小学生の頃、クラスにいつも忘れ物をする男の子がいた
見兼ねた先生は「忘れ物ノート」というものを作り、男の子が忘れ物をする度にそのノートに記録を書かせていた

男の子は先生に殴り飛ばされ、先生はいつも言っていた
「いいか、俺はお前が憎くて殴っているんじゃない。お前が少しでもちゃんとした人間になるように、お前のためを思って殴っているんだ」

しかし、男の子は忘れ物などしていなかった

忘れたのではなく、ちゃんと前日に持ってきたのに無くなっているのだ
ロッカーやランドセル、机の中を探しても無い

ある日、男の子は近くの踏み切りで自殺をした

バラバラになった男の子の遺体の中には何故か頭が無かった
警察や処理班の人が周辺を探し回ったが、どこを探しても見つからない

頭が発見されないまま男の子の自殺は近所に知れ渡り、数日後に先生の耳にも入った
先生は呟いた

「何も自殺までしなくても良いのに…」

男の子の物を隠していたのは先生だった
嫌な事や気に入らない事があると、その憂さ晴らしのために、忘れ物を理由に男の子を殴っていたのだ

男の子から盗んだリコーダーやコンパスなどを片付けながら、次の標的は誰にしようか…と考えていると、ふと背後で人の気配がした

「だ、誰だ…!?」

秘密を知られれば、憂さ晴らしが出来なくなる…
先生は慌てて振り返り、そしてもう一度手元を見て驚愕した

男の子の頭があったのだ

頭を放り投げ、逃げ出そうと後ろを向いてまた叫び声をあげた

先生の後ろには、首の無い男の子が「忘れ物ノート」を抱えて立っていた

翌日、職員室で変死体となった先生とあの「忘れ物ノート」が発見された
警察が忘れ物ノートを開くと、そこには震えた字でこう書かれていた

忘れたもの:ぼくのあたま、せんせいのいのち

−終わり−

悪いことをすると自分に返ってきますからね…

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