●怖い噺 拾


□海藻
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いい年をしてぶらぶらと遊び呆け、多額の借金をこしらえた男がいた
年老いた母親が八方頭を下げて男の借金を返してやり、男は母親に連れられて実家へ帰ることになった

ところが二人が乗り込んだフェリーは岸を離れたところで座礁して沈没し、男と母親を含めた乗客たちは真っ暗な夜の海へと投げ出された

水面に上がろうともがく男の足には海藻が何度も絡みつき、男はその度に水中深く引き込まれそうになった

男は海藻を蹴りほどきながら、命からがら海岸まで泳ぎ着いた

翌朝、浜辺には水死したフェリーの乗客の死体が多数打ち上げられた

その中には、恨めしげな顔を浮かべた男の母親の死体もあった

男は震えながら、傍で合掌していた地元の老人に尋ねた

「じいさん、このあたりの海は海藻が多いんだろ?」

しかし、老人は首を振って答えた

「いいや。石ころばっかりで、海藻なんか一本も生えてねえ海だよ」

−終わり−

足に絡みついたものは…

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