●怖い噺 拾
□近付いてくる
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職場の先輩の体験談です
当時先輩は大学生で夏休みを利用して普通免許を取るべく二駅先にある教習所に通っていました
夏休みを利用して〜と考える人は多く実技講習の予約がなかなか取れなかったらしく先輩は予約が取れなかった日も朝9時頃から教習所へ行ってキャンセル待ちをしていたそうです
毎日電車で二駅先の教習所まで通っていたある日、何気なく眺めていた車内で4両ほど先の車両に乗っている男性が目にとまりました
その男性は非常に背が高く網棚の上に頭を載せられるんじゃないかと思うほどで周囲の人の頭上に肩までも見えていたそうです
吊革を吊るしているポールに掴まり少し俯いた姿勢で外を見ているような格好だったそうです
その時は「デカっ!」と思っただけで特別気にもならず間もなく目的の駅に着いて降りたのですぐ忘れてしまったとのことでした
次の日も先輩は同じように電車で教習所に向かっていました
ふと昨日のことを思い出して前の車両を見ると3両ほど先の車両に昨日と同じ人を見つけました
同じような姿勢だけれど少し顔をこちらに向けているような何となくこっちを見ているような気がしたそうです
電車がカーブに差し掛かり一瞬男性が視界から消えました
先輩はずっと男性の居る車両の方を向いて何気なく見ていたそうです。また直線になり無意識に男性を探した先輩は3両先に居たはずの男性が2両先の車両に移動していることに気がつきました
さっき見た時と同じような姿勢で、でも今度は明らかに顔がこちらを向いていました
一瞬「うっ?!」と思いはしたものの特別恐怖感などはなく目的の駅に到着したこともあってその日もそれで終わったそうです
次の日いつも発車ギリギリで駆け込み乗車をする先輩は変わらず駆け込み乗車をしましたが昨日・一昨日よりも1本早い電車に乗りました
そして何気なく前の車両を見ると隣の車両にその男性が乗っていました
今度は間違いなくこちらを向いています。明らかに自分を見ています。その時初めて恐怖を覚えたそうです
そしてふと、次の駅を過ぎたところのカーブを思い浮かべ、もしかしたらこの車両に移動してくるかも知れないと思うと余計怖くなり、慌てて反対側の車両に移動して男性の方を見るとまださっきと同じ車両(今は2両先)に居ます
次の駅を通り過ぎ、カーブに差し掛かり、一瞬男性が視界から消えました
そして再び直線になった時、男性はさっきまで先輩が乗っていた車両に移動していました
男性は相変わらずジッと先輩を見つめ、先輩も怖くて目が離せず、次の駅につくまでその男性と見つめ合った状態で下車する時もホームに降りてからもその電車が発車して見えなくなるまでずっとその男性と目があったままだったそうです
それから先輩は電車を利用しなくなり毎日原付で教習所まで通ったそうです
男性の瞬きひとつしない目がとてもとても怖くて今も忘れられないと言っていました
−終わり−
…もし同じ車両に来たらどうなっていたんでしょうかね?