●怖い噺 壱


□火葬場での肝試し
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俺が17歳の頃に実際経験した話

当時、ほぼ常に一緒にいたSって奴がいて、そいつが色々怪談だとか心霊スポットだとかが好きだったんです
俺も昔は見えなかった物が見えたりするようになって(ぼや〜っと人魂程度にですが…)、面白がってました

やっぱり知識がないといけないですね、面白がっちゃいけなかった

夏休み、深夜2時前
いつものように夜中まで遊んでた俺たちは、ちょっと離れた火葬場に肝試しをしに行くことになったんです
もちろん、言いだしっぺはS
2人で行っても面白くないので、電話でAとYを呼び出しました
怖がる二人を連れて大きな道をまっすぐ自転車2台で走りました(二人乗り×2です)

火葬場が近くなってきて夏だというのに空気がどんよりと重く冷たくなった気がしました

そして火葬場に到着

でも実際は中に入る事はできなくて…当然ながら鍵がかかってたんですよね
仕方ないからここで怪談でもして気分をもりあげようかとSが言い出したので、みんなで火葬場の敷地内で輪になり怪談を始めました

怪談話をしていた最中の事です

Sがお清め用にと持ってきた塩のビンを振りながら話をしていたんです

で、みんなを驚かせる「わ〜!」とか、そういう怪談あるじゃないですか
その「わ〜!」の瞬間に腕を振り上げて塩をぶちまけてしまったんです

Sはちょうど俺と対面で俺以外の全員が頭から塩を被って文句を言ってました
その時の俺はというとざまーみろ日ごろの行いだよと能天気に笑っていたのです

時計の針が3時に近づいてきた時そろそろやめて帰ろうかという話になりました
んじゃぼちぼち…と立ち上がり正面を見た瞬間
ガラスに映ったんです
足のない男の子が麦藁帽子に虫取り網を持って

Sが俺の様子の変化に気付きました

俺は膝をガタガタ震わせ言葉を発することすらできませんでした

瞬時Sは自分の後ろを振り返り「やっと出たのか」と言いました
Sは突然様子を見てくると言いガラスの方向へ向かって歩いていきました

AとYは俺と一緒に立ちすくんでました

そしてしばらくして…

Sが俺たちを呼びました

俺はYに肩を借りてゆっくり立ち上がりSの方へ歩いていきました
「あのな、この先が火葬場みたいなんだ」
とSは言いました
つまりこの草むらを越えたところに荼毘に伏せる機械があると…
確かに草むらの奥の方に銀色の物体(学校にある焼却炉の大きい物のような…)が見えました

間違いない俺たちは確信しました

さっきの俺が見た少年といい、Sが感じている鳥肌といい、間違いなくいる…全員がそう感じていました

「じゃ、行ってくる」
Sはそう言うと草むらの中にズカズカと入っていきました
奴の心臓はもう毛しか見えないんじゃないんでしょうか…
そんな事を考えていると突然Sが叫びました
「やめろ、離せ!」
そしてSは物凄いスピードで引き返してきて「帰るぞっ!」と言うと自転車に向かって走りました
俺も腰を抜かしている場合ではありません
猛スピードで自転車まで駆け寄り後ろにYを乗せて急発進
全力でこいで明るい大通りまで走りました

そしてさっきまで晴れていたはずなのに突然の大雨…
間違いなく通り雨なのですが先ほどの出来事からも不気味で仕方ありません
帰路でYが肩を叩いてきて俺を怖がらせて楽しんでましたが2回、3回としつこいので無視しました

そして地元に帰ってくると暖かい物がほしくなりコンビニに入る事にしました
まぁ、濡れた全身にクーラーが痛かったですが…

「しかしY何度も肩を叩いても効果がないって何で分からないかなぁ?」
俺が笑いながら言うとYは
「え…?」
と言いました

「俺、2回しか叩いてないよ」
Yは言いました

おかしいです
俺の肩は3回叩かれてるんです

きっとパニックでおかしくなったんだよと慰められみんなでYの家に向かう事に
道中俺はずっとパニックなんかじゃないと思っていました
だって肩を叩かれたのは大通りに出た後…つまり俺は既に落ち着いていたのですから

「明日は昼からプールに行こうぜ」
そんな話をしながらYの部屋で雑魚寝することに
ですがみんながウトウトと寝始めた頃窓がガタガタうるさい事に気付いたんです
「何かうるさくねぇ?」
と俺が言うとみんなも同じように
「だよね、うるさいよね」
と部屋にひとつしかない窓を見ました

しばらくの沈黙の後Aが
「おい…誰かカーテン開けろよ」
と、みんなが思っていた事を口にしました

Sが無言で立ち上がり勢いよくカーテンを開きました
「うわああああああああああああああ!!」
カーテンにはびっしりと無数の手、手、手
大きなものから小さなものまで隅から隅まで白い手形がたくさん

しかもYの部屋の窓は曇りガラスでハッキリ物が見える事なんてありません
それが曇りガラスよりもクッキリと手形が…

俺は失神しました

翌日、プールに行く気分にもなれずYの親御さんに連れられて神社に御祓いに行ってきました
どうやら"連れてきた"のはやはり俺のようです

詳しい話を聞こうとしたのですが親御さんは何も教えてくれませんでした。

ただただ
「この事は忘れなさい」
と言うだけで…俺は一体、何を連れてきたんでしょうか

今となってはみんなとも疎遠で確かめる手段もありません…

−終わり−

肝試しをする場所はきちんと考えませんと…ね…

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