●怖い噺 四


□猫の鳴き声
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心霊関係ではたぶん無いと思いますが、書いてみます
この時期鮮明に思い出す、嫌な記憶です

皆さんこたつに入って寝てしまったことはありませんか?
自分はよくあります

まあ、それに関係した話です

その時は確か冬
こたつの中で寝てしまった自分を、家族はそのままにして各々寝床についていました

疲れて寝てしまったとはいえ、半端な時間に寝れば起きるのも半端になります
起きたのは夜の1時過ぎだったと思います
暗くて時計は良く見えませんでした

参ったな、宿題やってないやと思って布団をめくり起き上がる前に、何か異変を感じました

「ニャァ」という猫の鳴き声がしていたのです

自分は少し訝しみましたが、猫がさかっているのと思い、暗い外に目だけを向けました

薄暗闇に何か大きな影が見えました
それはじっと、こちらを向いてます

そしてその影から断続的に「ニャァ」という声が聞こえるのです

……
…………

それは猫ではありませんでした

カーテンの開いたガラス戸から覗くその男は、影になって表情が見えませんでした

そう、それは間違いなく人型の人間でした
発する声を覗けばですが

ニャァ ニャァ ニャァ…

声は何かを訴えるような抑揚もなく、ただ一定に『鳴いて』いるだけでした

向こうは灯火と月の光で明るく、こちらは暗い室内
こちらからそいつが良く見えても、向こうはガラスが鏡のようになって仔細に中を覗うことは難しいはずです

気付くことが無いはず
それでも…恐い
身動きがとれませんでした

しかし十分、二十分経ってもそれは変わらずにそこに居続けました

執拗で、変質者としては静か過ぎる
ただ鳴くだけ、それだけです

ニャァ ニャァ ニャァ…

気味の悪いけれど単調な声であるせいか、身動きがとれない自分は思考がどんどん鈍化し
…つまり眠くなってしまいました

今思えば変な話です
つい先程寝ばかりで、それに緊張しきっている自分がこうも簡単に寝入ってしまうなんて

でも、そのままプツンと意識は途切れ、自分はそいつを見失いました

翌日
朝起きればその場所には何も無く、家族に質問しても誰も気付いてはいませんでした
庭の芝に特に異変はなく、雨も降っていなかったので足跡の類も見つかりません

親に夢を見ていたのだと諭され、渋々自分も頷いたのを覚えています

ひょっとすると本当に、唯の夢だったのかもしれません
気味の悪い、唯の悪夢

でも、今も思い出してしまいます
あの声を、あの鳴き声を

−終わり−

…(汗

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