●怖い噺 四
□開く障子
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今から十年前の中学時代に体験した洒落にならない話
1泊2日の研修旅行というのがあって、クラスで班分けがあった
そこで友人のAが「本格的にローソク使って百物語をしない?」と持ちかけてきたので
班の子全員「それ、面白そうだね!」とノリノリで承諾
でも宿泊先がどんな所なのか
知ってたら絶対実行しなかったのに…
宿泊先は山の中腹にある宿泊施設
発砲スチロールで出来た様なデカイ仏像をあちこちに置いている所でした
一通りのレクが終わり、就寝前の自由時間
隣の班の子達も急遽参加で百物語は始まり部屋の電気を消して
「いざっ!ローソクを…」ってなったのだけれど
「お菓子くれ〜」という乱入が結構あったためローソクを使っての怪談を断念することに
代わりに部屋に設置されている懐中電灯
スイッチ式ではなく付属の差込で消灯するやつで行う事に
話たら懐中電灯を消して次の人に廻す
怪談の内容はそれこそどっかで聞いた事があるような他愛の無い話
いよいよ最後の子が話し終わるかなって時に黄色っぽい光の懐中電灯が弱いオレンジ色の明かりになった
「いやぁぁぁぁ!」軽く皆パニック
すかさず誰かが部屋の灯りをつけて
「まぁ、これだけ人が居たから電池が弱って当たり前なんだろうけどちょっと怖かったね」と、その場をフォローしてくれてプチドッキリだったよね、で終了
寝る準備をしつつもやはりおしゃべり大好きな年頃なのでなかなか会話は終わらない
気付くと外は雨が降っていた
「寒いから障子窓閉めて」誰かが言った
部屋の窓は少し出窓っぽいヤツで内側の障子がカーテン代わりの感じ
ぴしゃん、とAが閉めてまた他愛の無い話を巡回してる先生に見つからないように楽しむ
「あれ?また障子が開いてない?」また誰かが言った
え?さっき閉めたよね?
見ると確かに10cm位開いている
イヤな感じもしたけれどその想像は怖いのは皆一緒だったので「やだなー、誰?ふざけないでよ!」とカラ元気を出して
Aがまた障子を閉める
でも、誰も障子に近づいてなんていないんだよね
寝転がってるから、起き上がれば気付くはずだし…
障子に注目する
でも障子は開く気配が無い
十代の集中力は
怖い<好きな異性 なワケで、話に花が咲く
「また開いてる!」
もうこれは絶対、私たち以外の何かの仕業
こんな部屋居られない!皆半泣き状態で廊下で見張ってる先生に嘆願するけど「そんなワケないでしょう!寝なさいっ!」
お化けも怖いけど怒る引率はもっと怖い
泣く泣く部屋に戻って窓からなるべく離れて皆身を寄せ合って半分覚醒の半分睡眠状態
障子は見てると開かないっぽいから交代で眠った
朝になって夜半からの雨も小降りになり
「部屋が明るい」それだけで嬉しかった
明るくなったらお化けはでないから
そう勝手に決めていた
「…障子開けようか」Aが言う
「言いだしっぺのAが開けてよ」
もう明るいんだから大丈夫だよと思い私が引き受ける
「じゃ、あけるよ!」
開けなきゃ良かった…
出窓のガラスには温度差で曇りができてて
異質な形の右手部分だけがのたうった跡が付いていた
人の手って指紋があって関節もあるので窓に押し付けるとつく部分と付かない部分がある
でも、窓についてる右手の跡は関節が無い
指紋も無い そして細長い
押し付けてそのまま横に手首を回転させながらスライドしたその跡は
ガラス窓と障子の隙間(約20cm)に居た事になる
どん底に落とされた気分のまま、もそもそと美味しくない朝食を摂り
帰りのバスに乗り込む頃には他の班の子達と違って皆無口だった
「みなさん、楽しい思い出作れましたか?」バスガイドさんの質問とその後の話にトドメを刺される
「皆さんが宿泊した●山は海を隔てた恐山と直線で結ぶことができるため霊山として参る人が結構いるんですよ」
霊場だって知ってたらこんなバカな事しなかったよ
−終わり−
霊山で百物語ですか…
贅沢ですね