●怖い噺 四
□黒板に書かれた呪
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A高校は新学期から一年生が1クラス増えた。
その教室は今まで教材置き場としてしか使われたことのなかった教室だった
梅雨に入った6月の半ばごろ、そのクラスのTは早めに学校についた。教室に入ると早く来たせいか誰もいない
ふと黒板を見ると赤いチョークで「呪」という字が大きく書かれていた。Tは何かの悪戯だろうとそれを消した
翌日Tが朝一番に教室に入るとまたそれはあった。Tはすぐに消したのだが気味悪く思い朝は学校を遅めに出る事にした
それから三日後Tが教室に入ると黒板には最初に見た時と同じように「呪」の文字があった
ただ違うのはその字が赤いチョークよりももっと濃い赤でまだ乾いていない絵の具のようなもので書かれていた事だった。既に登校していたクラスメートも何人かまわりに集まっていた
その日一番最初に登校したSに話を聞くと「ここ3日ほど最初に教室に来てて「呪」の字を消してたのだけど気味悪い悪戯だから今日はこのまま残して、先生やみんなに見てもらおうと思った」と言った
朝のHRが始まるころにはクラスの大半が登校していて字を見てざわついていた
担任が教室に入ると字を見て「誰がこんな事をしたのか?」と言いTとSが今までの事をみんなに説明した
職員会議で夜中に誰かが忍び込んで悪戯するのだろうという事になりその教室は学校が終わると鍵をつけることになった
しかし鍵をつけたのにも関わらず次の日も「呪」の文字はあった
その字は赤黒く、黒板にこびりついて容易には消せなかった
その日の授業で突然Tが狂ったようにわめき暴れ出し何人かの教師におさえられ救急車で運ばれていった
さらに次の日、学校が終わったらその教室に鍵をかけて夜に校内を見回る宿直の教師がその教室の前で死んでいた
死因はショック死だった
生徒は混乱し「呪」の祟りだと一時パニック状態になった
そのクラスは臨時に教室を視聴覚室に替えることになったが霊がいるだの、PTAにまで噂がのぼり霊媒師にお払いしてもらう事になった
夜、校長をはじめ学校側の教師数名とPTAからの数名の立ち会いのもとに霊媒師を呼んでの御払いがその教室で行われる事になった
外は雨が降り蒸し暑いというのに教室の中はうすら寒く異様な空気が流れていた
午前二時を過ぎた頃、霊媒師が「来ました」と言った
ろうそくの薄明かりに霊媒師が一心にお払いの言葉を唱えている中、皆は黒板に釘付けになった
そこには何も無いのに「呪」の字がゆっくりと現れ、字からは血がしたたり落ちるように流れた
次の瞬間字はフッと消えた。霊媒師はその場で倒れ保健室に運ばれた。しばらくして霊媒師が目を覚ますと「お払いすることができませんでした。」と言った
理由を聞くと昔この土地で死んだ女の霊が現れたという
立ち会いの何人かもその時女が見えていた人がいて、髪が顔が見えないくらい長く、白い服で、口から舌がへそくらいまで垂れていて、手の指先が切られその指で「呪」の字を書いていたと皆同じ事を言った
霊媒師によるとその女は強姦され、その時のショックで狂ってしまい自分の指を噛み切り自分の舌を噛み切り、井戸に飛び込んで自殺をしてしまったらしい
その井戸が教室の真下の位置に埋められており、だから女はそのクラスにとり憑いたと言う事だった
女の怨念は凄まじくお払いする事ができない為その教室はおふだが貼られ誰も入る事が出来ないように鍵もかけられ一年の教室も別の教室に移されることになった
今でもその教室には「呪」の文字が乾く事無く残っているらしい
−終わり−
強姦されて呪たいのは分かるけど…その教室は呪うべき場所ではない