●怖い噺 四


□笈神様
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その日の夜、私は久し振りに母に添い寝してもらいました
母に「あらあら・・・ もう1人で寝れるんじゃなかったの。」と言われながらも恐怖に打ち勝つ事は出来ずそのまま朝を迎える事となりました

もう雪は完全に溶けていました。親に出来事を話しましたがそんな訳あるかと信じてもらえませんでしたが泣きながらの必死の訴えに折れたのか現場を見てきてくれましたが何も無かったとの事でした

しかし子供は自分を一番信じる物でやはり自分の見たことを疑う事はありませんでした

丁度冬休みで一週間後には実家へ帰省するという頃の出来事でした

その後、数日間はあの出来事を思い出し外へ行く事が出来ませんでしたが元気に外で遊ぶ弟を見ているとあの出来事は夢だったのだろうかと考えるようになり、いつしか自分も外で走り回っているようになりました

あのような出来事も無くいつしかほとんど記憶の隅から忘れ去りいつのまにか実家へ帰省する日がやってきました。車で高速を通っておよそ5時間程かかります

いつものように自分のお気に入りの携帯ゲームや本等を前日に用意し実家へと帰ったのです

お婆ちゃんや、おじいちゃんに会う事を楽しみにしていた私ですが実家についた時、凍りつきました

実家の家の構造はまず塀に囲まれており、一箇所が門もう二ヶ所がそれぞれ車庫と裏口に通じるようになっており門を潜ってすぐ右側に庭、まっすぐ進めば玄関となっています

私が凍りついたのは、門から入りなんとなしに右側を見たからでした。そこにはあの球体があったのです。まだ空も明るい午後5時頃の事です。色はここでも見たはずなのにやはり覚えていません。触る勇気はもはやありませんでした

恐怖に打ちのめされそうになりながら親にしがみつき父親に球体を指差し言葉にならない言葉を発しながら泣き出しました

ところが親には何も見えないようで何故私が泣き出したのかわからず困っていましたが何か大きな生き物でもいたんだろうという事で納得されました

ただその時、玄関から出て私達を迎えてくれたおじいちゃんだけは真剣な顔つきで私を見つめていました

小1時間程本を読んだりして暇を潰した後、夕食を食べる事になりました。夕食は子供が好きだからという事でカレーライスでした
勿論私も大好物なので喜んで食べました
ただ、やはりあの球体が気にかかり心配でした。もちろん恐怖も

1人で早々に食べ終わらせ2階の寝室に行き静かにして落ち着くつもりでした。2階へ行き寝転がって本を読んでいると静かに襖が開きおじいちゃんが来ました

おじいちゃんは静かに私の隣に座り一言漏らしました「○○(私です)ちゃん…笈神様(おいがみさま)が見えるのかい…?」

笈神様…私はすぐにあの球体の事だと解りました

「おいがみさま?」
「笈神様。庭に安置してある丸いボールがあったろう?あれの事だよ…」

私にもわかりやすいようにボール等という言葉を使っていたのをよく覚えています

「笈神様は、この土地に代々伝わる神様でな…」
「何の神様なの?」
「うーん…何もしない神様かな。一応神様という事になっておるから悪口は言えんが」

そういっておじいちゃんは私に笈神様のことを話し始めました。要約すると、こういう事です

笈神様は人々に利益を与える事は何もしない神。だが人間が悪い行いをするとそれに見合うだけの天罰を降らせる。しかし人間が人間に対して悪いことをしてもなにも起こらない

要するに人間ではなく自然を守る神という事になるのだろうか。人間に対してではない悪い行いといえば自然に対する事しかない

おじいちゃんも詳しいことは何も知らないそうだが言い伝えによれば何百年も昔から笈神様を見る事が出来るのは数少ない人間のみで笈神様もその数だけ存在するという

見える者はそれを祭り管理しなければならない事になっているという。またこの話はこの地域の人間は誰もが知っており天罰を避けて悪い行いはまったくしないという

こんな話だった

子供心になんだそりゃ…理不尽な神様だなぁと思ったが口にしなかった。しかしその後とんでもない事を思いついてしまったのだ「そんな神様、私が倒してやる!」

私は倉庫から金槌を持ち出し未だに庭に見える神に近づいていった。そして思い切って真上から振り下ろしたのだ

直撃する瞬間「ドゴゥォォォォォォォォオオオオオオオオオオン」と物凄い音がしそれと同時に臭い臭いが漂ってきた

音に気付いたおじいちゃんが凄い形相で走り寄ってきた。私は呆然とその残骸を見詰めていた

そこには真っ二つに割れたカプセルと、半分ミイラ化した茶色い死体が入っていた

その死体は他の人にも見ることは出来たらしく警察も来るおおさわぎになった

後で聞いた話によるとその死体は凡そ60年前の子供の死体だという。だが何故こんなにも保存状態が良かったのかは解らなかったらしい

おじいちゃんにこっぴどく叱られたが、おじいちゃんの話によれば保存状態が良かったのはカプセルのせいかもしれないという事だ

あの時、俺が見たカプセルにも何かが眠っているのだろうか…

−終わり−

皆さんは笈神様を見ても割っちゃダメですよっ!!
上記のものよりもっと酷いものが出てくるかもしれないですよ

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