●怖い噺 四
□連れて行くよ
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知り合いの看護婦に聞いた話
彼女が勤務していたのは個人病院。ターミナルケアの老人が半数を占める病院だったそうだ
ある夜、彼女の担当している病室からナースコールがあった。呼び出ししたのは老婆。痴呆が進みほとんど植物人間状態の患者だった「どうしたの?おばあちゃん」彼女は耳元で声をかけた。すると
「○○さん、あんたも連れてくよ」
その老婆は瞼をかすかに開けて静かに呟いたそうだ
「何?おばあちゃん、何て言ったの?」
彼女は良く聞き取れずもう一度訊ねた。すると老婆はもう一度呟き完全に眼を閉じたそうだ
○○さん?彼女は聞き覚えがあった
老婆の見舞い客の一人にその名前の中年女性がいたことを思い出した
彼女の危惧していた通り翌日老婆は亡くなった。それからしばらくしてナースルームに老婆の息子夫婦が菓子折りを持ってきた
案の定、息子の奥さんの名前が○○さんだった
彼女は病院を去ろうとする奥さんに老婆の最後の言葉を伝えるべきか迷った。それは非常識だし縁起でもないことだったので結局言えなかったそうだ
一週間ほど過ぎたある日、彼女は救急当番のシフトについていた。深夜ナースルームで待機しているとコールサインが鳴った。救急車が到着し緊急治療室に一人の女性が運ばれてきた。なんとあの○○さんだった
彼女は姿を見せない研修医を呼びに休憩室に走ったそうだ
「急患です。急いでください」
彼女は休憩室の扉に手をかけて呼びかけた。そして扉を開けた瞬間、彼女は失神したそうだ
結局警備員に起こされて彼女は意識を取り戻した。一時間近く気を失っていたそうだ。その間○○さんは心臓疾患で亡くなった
新人の看護婦と研修医の医療処置がどうだったのか分からない。ただ彼女は自分のミスだったと感じたそうだ
研修医も待機中に寝入ってしまったと彼女にだけ告白した。実は金縛りにあっていたと
さて、彼女が見たものは何だったのか…
−終わり−
さて…本当に彼女が見たものとはなんだったのか…
きっとこの噺には尾鰭背鰭が付いて後数年もしたら見たものまで書かれていたりして