●怖い噺 四


□鏡の中の自分
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みなさん「紫鏡」と言う言葉をご存じでしょうか

この言葉を知っている人は二十歳の誕生日迄に忘れてしまわないと鏡の世界に引き込まれ死んでしまうと言う話です

この話の発端となるのは私が小学3年生の時の担任の先生が住んでいた東京都八王子市にあると聞きました

昔八王子にはライ病患者の隔離施設が存在しライ病患者達が不治の病と供に生活していました

ライ病とは皮膚病の一種で肌がただれ、人によってはただれた肌が紫色に見えることから

鏡に映った自分が紫色に見えたら、ライ病が発生し死に至るという事でが紫鏡の発端だったと聞きます

私の先生が子供の頃もこの話しは有名で
「今A君が紫色に見えた」
「B君だって紫色の服着てるじゃん」
など冗談混じりに言いながらも怯えていたそうです

ここからは先生が子供の頃のお話です

休み時間ともなれば小学校で鏡の前に立ち自分が紫色では無いことを確認するのを面白がってやっていました

ある時友達のA君が「今、鏡の中の僕が笑ったよ」と言いました
私は「A君はいっつも笑ってるじゃん」と言い
丁度チャイムが鳴ったので、みんな笑いながら教室に向かいましたがA君だけは青ざめた顔をしていました

先生は子供ながらに何か嫌な予感がしたらしくA君に大丈夫だよと促しました

翌日になると事態は一転しました
A君が学校に来ていません
「先生!A君はお休みですか?」
クラスの誰かが聞きました
すると先生から
「悲しいお知らせですが、A君は昨夜心臓発作で亡くなりました。A君の為にもお通夜には参加しましょう。」

クラス中が動揺する中、先生はピンと来たそうです

昼休みにいつものように友達と集まっている時に言いました
「昨日A君さぁ。鏡の自分が笑ったって言ってたよね。何か関係あるのかな?」
周りのみんなはそんなことある訳がないと怯えながらも強い言葉で否定しました
自分だって信じたくはありません
でも、もし…

お通夜でA君の家に家族で行きました
花と線香をあげると
先生は「A君が見たい。おばちゃん最後にお別れが言いたいからA君を見せてよ」
しかし、おばさんは幼い息子を失ったショックでか浮かない顔をしていました
先生も子供ながらそれを察知して無理強いはしなかったそうです

お葬式も終わりクラスの皆も落ち着きを取り戻した頃先生はA君の家に行き線香をあげようと言いました

学校が終わり友達とA君の家に行った時の事です
線香をあげに来たと言い上がらせてもらいました
そして皆が線香をあげて帰ろうとした時におばさんが
「〇〇君、ちょっといい…?」と呼び止められ
先生は残り他の友達は帰宅しました
A君と一番仲のよかった先生だけが残るように言われたのです

「実はAが死んだ朝、最初に見つけたのは私なのよ」
おばさんは続けて言いました
「時間になっても起きてこないから起こしに行ったの。最初に見た時Aの体が黄色になっていることに気付いたわ。横向きになっていたんだけど触れたら体が冷たいから急いで顔を見たら…言葉では言い現せない程怯えた表情だったの…」

先生は最後まで聞きました

目は白目をむいていて、舌が飛び出し腕が間接とは逆に曲がっていたそうです

お通夜で見せられなかった理由もそれだったとおばさんは伝えてくれました

先生も大学生になり線香はあげていたもののA君の死因を忘れかけていました

そして当時所属していたサークルでも人気で一番可愛い女の子と付き合っていたそうです

先生の家族が旅行でいない時に彼女を家に呼び、テレビを見たりしていたそうです

先生がお風呂に入り、次に彼女が入りました

洗面所で髪を乾かしている彼女がこう言います
「ねぇ〇〇くん、今ね鏡の私が笑ってた。幸せだからかな?」

その言葉を聞いた瞬間背筋がゾッとし全てが走馬灯のように記憶として甦りました

今夜何か起こるのか?
記憶を押し殺すかのように、先生は何も知らないふりをして夜を迎えました
何かがあるなら見届けようと…

時間は午前2時半になろうかと言う時です、彼女は先に寝ていましたが先生はテレビを見ていました

するとベッドで寝ていた彼女が突然動き出したのです
先生は恐る恐る布団をはぎ取りました

すると足元には見たこともない手鏡から笑顔の彼女が足引っ張っています

必死で引っ張りましたがあまりに強い力にとうとう彼女は鏡の中に吸い込まれてしまったそうです

先生は怖くなり電気を付け警察に連絡しましたがそんな冗談のような話を信じてくれるはずもなく、ただただ待ちました

すると突然ずしりと肩に重さがかかりましたよく見ると黄色い人間の手です
振りほどいて見ると見るも無残な姿の彼女がいたそうです

さすがに警察も乗り出し死因を調べましたが心臓発作によるものと断定されました

先生はその影響によるショックで髪が白くなってしまい、しばらく入院しました

私が小学生の時先生は27才でしたが真っ白い白髪でした
若爺さんとも呼ばれていました

先生はこの話をした後言いました

「誰もが一生に一度は訪れる現象です。もし鏡の中の自分が笑ったら決して誰にも言わないように。そして恐がらず、やさしくほほ笑み返して下さい」

と涙ながらに喋る姿は小学生ながらもクラス中が本気なんだと感じました

この話を知らない友達が仲間内で「鏡の中の自分が笑った」と言い心臓発作で亡くなったことが私の周りでも一度だけあります

笑いかける鏡の自分は鏡ではなく水面やガラス、会話している人の目に写ることもあるそうです

ひょっとすると自分の知らない間に笑いかけているかも知れません

迂闊に鏡の中の自分を他人に語らないようにした方が賢明だと思います…

−終わり−

あれ…
私の友達が「鏡の自分が笑った」って言っていたような

新しい怪談にならない様に気を付けないと
ですね

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