●怖い噺 四


□追いかけてくる
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冬になるたびに思い出しちゃう話です

高校2年から大学受験を控えて塾に通いだしました
理系なのに数学ヤバいとかいいながら結構焦ってた記憶があります

塾で苦手だった古典の授業を取らせてもらったとき
その授業は文系理系一緒だったんですが…

そこにいた文系の男子(Aとします)にプチストーカーされました

ストーカーといっても自習室で隣に座ってきてこっち見てきたり
階によって男子トイレ女子トイレが違うのに女子トイレから出ると女子トイレの方を見ていたり
後は古典の授業ですぐ後ろの席に座られてイスつついてきたり
ウッカリ目があった時ニヤアァっとされるんです
申し訳ないけど気味が悪くて怖くて

女子高に通ってたけど彼氏作りたくて来てるんじゃないし浪人が許されない環境で必死だったんですよ
だからなおさら塾の中限定とはいえ、まとわりつかれて非常にウザかったです
何ていうか見かけるだけでストレスになるくらい

同じ高校の人が「彼氏?w」ってからかってくることもありましたが勿論違うと主張してました
実際に違うし
それがどうもAに間接的に伝わったそうで

今度はこっちを睨みつけてくるようになりました
まとわりつくのはやめてこなかったのですけどね

マックで勉強したりとかして離れるように工夫しました
塾の先生に話しても余計こじれると面倒なのでもういいやって放置を決め込みました

まあ勉強で忙しくてAのこととか忘れてたんです

11月模試を翌日に控えたある土曜日のことでした

理系数学の授業が終わり
やれやれと帰るとこでした
明日の模試ヤバいなあ〜とか思いながら
いつもは友達とつるんで帰りますが
土曜は一人で帰る日だったので
夜遅かったし足早に駅に向かっていました

塾の入ってるビルを出て少し歩いたところでいきなり鳥肌が
普段なら2秒位で収まるのが、6秒位ゾオォオ〜っと
それに加えて刺さるような視線を背中に感じて後ろを振り向くのに一瞬ためらいました

そのまま前に進むのも気が引けて、右手のカバンを強く握って(変質者を殴れるように)バッと後ろを見たら

Aがいました

怒りのせいか口を歪めた表情でこっちを睨みつけていました

一瞬で血の気が引いたよ

暗くて人気がない路地だからどこかにでも連れ込まれたらヤバい!!
考える暇もなく近くの大通りへ足が走り出したよ
全速で走って大通りに出たときに
いつも青なのに赤信号でした

とにかく立ち止まるのが嫌で駅に近い方へと通りに沿っていこうとすると後ろから

カチガチガチギチギカチカギチチギギギ

って聞こえたきたんですよ
ヒトってあんな音出せるんだね…
後ろでAが歯ぎしりしてました

血走った目でこっち見て絶え間なく歯ぎしりしてました

驚きすぎて声が出なかったから
しばらく後ろ振り向いたまま固まってました

青信号に変わってたことに気づいてダッシュでプラットホームまで逃げました

それ以来Aのことを見かけず

間接的に
精神的におかしくなっていたとも聞きました

ただ一人で塾から駅まで行くのが怖くて友達と待ち合わせて帰るようにしていました

センター試験とか受験本番とかに現れたらどうしようとビクビクしてたが
現れなくてホッとしました
何とか無事に大学生しています

大学の同じ学科の人でAと同じ高校だったBからAは亡くなったと聞きました

受験勉強を苦にしての自殺だったそうです
遺書にそうあったとか

怖い目にはあったけど気の毒だと思いながら色々話していたんですが…

自殺した日付がおかしいんですよ

私を追いかけてきた土曜日の3日前(水曜日)にはAの葬式があったらしくて学級委員をしていたBは先生方と一緒に出席したそうです

Bが言うには高校のとき水曜日は早く授業が終わるから友達とサッカーしてから悠々と塾へ向かっていたのだが
模試が近いのにAの葬式に出席し塾に遅れていって
先生に模試大丈夫なのか?とからかわれたのを覚えていると

どう考えてもAが私を追いかけて来る筈がないんです

あの時私を追いかけてきたAは何だったのかいまだにわかりません

ただ
Aにお線香をあげに行くつもりはありません

またあの時みたいに追いかけられるのは嫌ですから

−終わり−

人間の他人への執着
人へ対する残留思念は
少々厄介ですね

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