●怖い噺 九


□テントの外の足音
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数年前、5月のゴールデンウィークに茨城にキャンプに行ったときの話

メンバーは友人A、B、Cと俺の男4人。A、B、Cは連休さえあればキャンプに行ってるが俺はいつも休みが合わずこの時が初参加だった

「どうせ茨城なら海辺がイイ」

「周りに迷惑がかかると悪いから人の少ないところ」

と、国道51号線から数百メートル細い道を入った所にある某海岸に辿り着いた

その海岸入り口付近には先客の家族連れキャンパーがいたので俺達は更に海岸を進み200メートル程離れた砂浜にテントを張った

昼間はサーファーがイッパイいたが夕食の準備をする頃には誰もいなくなり見渡す限りその海岸には先の家族連れキャンパーと俺達の2組のみになってしまった

周囲に灯りもなく早めに寝る事にしたのだがテントは3人用だったので並んで寝るのは3人が限界

そこでA、B、Cは川の字に俺はその足側に一の字につまり「山」みたいな形で寝た

夜中、俺は尿意を催し目を覚ました

携帯で時間を確認すると2時ちょっと過ぎだった

「こうゆう話は大概2時だ」

と全く信じてなかった俺だが、体を起こそうとした時波の音と明らかに違う音が耳に入り俺は体を硬直させた

多分5メートルぐらいは離れているであろうその音は

「ザッザッザッ」

と俺達のテントに近づいてくる

その音の重み、間隔から人の足音だと直感した

ちょっと待て

少なくともテント越しに灯りは見えない。灯りも無しにこんな砂浜を歩くのは不可能だ

家族連れキャンパーは南に200メートル程でこんな所まで来るはずがない

しかも足音は東側から聞える…第一…これは(生きてる)人間か?

俺の頭はパニック状態

足音は既にテントの外数十センチまで近づき俺達のテントの周りを時計回りに回り始めた

「どう考えてもヤバイ!」

友達に声をかけようと思ったが大声を出すのも怖い。しかも友達は俺に足を向けて寝ているので、頭部までの180センチ程度が異様に遠く感じる

この状況で寝袋から出る勇気もない俺は尿意も忘れ寝袋にすっぽり頭を入れ足音が聞こえなくなるまで我慢する事にした

しかもその足音はテントを一周する毎に俺の所で停まり1〜2回テントの布を押していく

テントの骨組が歪み「ギシィィ」と嫌な音が響く。俺は必死に脳内で歌を歌いながら「寝るんだ!寝るんだ!」と繰り返しふと気が付いた時には外も明るくなっていた

俺は尿意を我慢していた事を思い出してテントの外に飛び出しなんとか粗相をせずに済んだ

ホッとしてテントに目を向けて愕然とした

テントの周りには何週したか解らないほどの足跡があり、それは海の方から来てまた海の方に戻っていた

俺は友達3人を叩き起こし、事情を説明し逃げるようにその海岸を後にして、その日は他のキャンパーが沢山いる公共のキャンプ地に泊まった

−終わり−

海は怖いね…まぁ僕も近いうちに海に泊まりに行くけどね…お土産はとっておきの怪談♪

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