●怖い噺 九


□一週間過ごした女
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友達Fの実体験の話

Fとその友達が、肝試しである廃病院にいったそうです

普通に行って帰ってきたんじゃそこらへんの奴と一緒じゃないかってことで、二人ペアになって病院の中を探索し、なんか証拠になるようなものを持って帰ってくる
っていうルールを作って入ったらしいです

怖い体験も特に誰もせず、幽霊の話よりも戦利品の見せ合いに夢中になっていたそうです

注射器を持ってきた人、医療品の入っていた袋などいろいろ病院っぽいものをみんな持って帰ってきたそうです

Fはというとデスクの上に置いてあった誰かのレントゲン写真を持って帰ってきたそうです

Fの戦利品が一番リアルだって話になって、誰かを怖がらせようぜって話になったらしいです

ターゲットはその日たまたまバイトで一緒に来なかったN君

普段からFは、その人のアパートに毎日のように出入りしてたのでFが実行人としてN君宅に翌日出向きました

N君がラーメンを作ってくれてる間に、もってきたレントゲン写真をこっそりN君の机の引き出しに入れたそうです

そのあと怪しまれないように他の肝試しに行った面子も偶然を装いN君の家に集まってきました

いつこいつがびっくりするのか見てやろう!って感じで、N君のアパートでいつものようにを装って、わいわいやってたそうです

そうするとすっかり盛り上がってしまい誰しもがレントゲンのことを忘れていたそうです

そうこうするうちに、N君のケータイにメッセージが入ったそうです
メールは高校のときの同級生の女の子で『今から合コンしないか?』との誘いでした

野郎ばっかりでむさくるしいのもあれなのでテンション任せに全員で即効合コンに出向いたそうです

カラオケボックスで合コン開始
割とかわいい子たちと、仲のよい同級生の女の子に出会い、一行は酒を浴びるように飲んだそうです
みんなで盛り上がっていって、ふとソファーの横を見ると誰のかはわからないけど大荷物があったそうです
まあいいやと気にもとめずに盛り上がり続け、合コン終了

Fは家に帰るのがだるかったので、そこから近かったN君宅に泊めてもらうことに

女の子たちの番号をゲットして、さー帰宅!ってなったときに一人の女の子が近づいてきたらしいです
「ごめーん、あたし今さー、家出してていくとこないんだけど、しばらく泊めてくんない?」って
N君は
「仲良くなったばっかで、そっちが別に俺たちに対して不安とかないなら、こっちはぜんぜんかまわないけど」
と、快く承知

ソファーにあった大荷物はその子の物だったようです

3人でN君の家について、お酒と疲労のせいで3人はコタツで一気に爆睡したそうです

次の日、3人が目を覚まして「そういえばAちゃん(家出少女)のケータイ聞いてないね」なんていいながら3人でメアド交換したそうです

Fはメモリを全部フルネームで入れる奴なのでAちゃんのフルネームを登録した後、なんか聞いたことある名前だなあ
あ、新人のグラビアに、そういやそんななまえあったような…
と、思っていたそうです

そのあとまたN君のケータイに合コンの誘いが

今夜も3人で行こうかってなったんだけど「Aちゃんは気分が優れないから」と、断ったそう

N君とFの二人は「Aちゃんになんかあったら連絡してねーっ」つって、合コンに行ったらしいです

二人がまた深夜に帰宅するとAちゃんは当然ぐっすり眠っていたそうです
んで、二人もまた昨日同様爆睡

次の日、N君はバイトでした
Fは家に帰ることになり、またAちゃんだけがN君の家にいることに

N君はAちゃんをきづかって、Aちゃんの好きなラーメン買ってきたり、お酒買ってきたりと、一人でも大丈夫なように奮闘したそうです

N君が夜遅く帰宅すると、いつものようにAちゃんは寝ていたり、Fが友達連れてきてAちゃんも一緒にいたり

そんな生活が一週間たって、また週末がやってきました

Fは「そういえばAちゃんはまだいるのかなー今週も合コンあんのかな」とか思って、N君家に行ったらしいです

N君は留守
Aちゃんはその場にはいなくて、荷物もなかったため

あー、Aちゃん家帰ったんだーと思いながら、N君が帰ってくんのを待ってたそうです

すると、また肝試しに一緒に行った友人たちがN君のところにやってきて主のいない宴会を勝手にいつものごとくはじめてたそうです

ところが、N君が待てど暮らせど帰ってこないそうです
バイト中のためかケータイもつながりません

そして、誰からともなく肝試しの話になり、
またしばらくの間、時間をおしゃべりでつぶしていたところN君帰宅

N君は帰ってくるやいなや「あれ?Aちゃんいないの?」といったそうです

「俺たちが来たときにはもういなかったよん」っていうと
「あれー?俺バイト行く前までいたんだけどなー?」

ちょっとの外出にしちゃーあの大荷物がきれいにありません

メールも入ってないし置手紙もない
どうやら様子が変です

心配になって合コンに誘ってきた同級生の女の子に「Aちゃんって家に帰ったの?」って聞いてみたそうです

そしたらその女の子は『Aちゃんて誰よ?』っていうそうです

「合コンにいたAちゃんだよ!俺んちについてきた子いるじゃん大荷物もって!」
N君は必死です
N君は電話をFに渡しFも必死に説明しました

そのときN君がキッチンから、みんなのほうに向かってこういったのです

「おい。あの子この一週間なにも食ってねーぞ…」

外食ばかりのN君は今まで気づきませんでしたが、N君がAちゃんに買ってきた食糧はすべてそのまま
ジュースの缶すらあいていません
ごみすらないのです

一同静まり返ります

そして誰からともなくこんな声があがりました
「そういえば俺、あの子がトイレに立つとこみてねーよ」
「そういえばあの子ぜんぜん酒のめなかったよな。ていうか飲んでるとこみてねーよ!」
「やめろよボケが!んな人間いるわけねーだろ!俺らが酔ってて気づいてねーだけなんだよ!」

Fは必死にまだAちゃんのことを説明していましたが、その同級生は『そんな友達いないし、そんな大荷物もった子なんて見かけてもない』と言い張るんだそうです

気持ち悪くなって、いったん電話を切りAちゃんにかけてみたそうです
『お客さまのおかけになった電話番号は、現在つかわれておりません…』

一同あせりまくったそうです

メールしても送れない
何回誰の電話からかけてもつながらないのです
昨日までつながってたAちゃんの電話が

そのときFは思い出してしまったのです
身の毛もよだつ事実を

「おいN。お前引き出しのなか見たか?」

「は?なんだよ。見てねーよ。なにいってんだお前こんなときに?」

「俺ら、お前のこと脅かそうと思って、合コン行く前にお前の机に入れたんだよ!廃病院で取ってきたレントゲン写真!」

「んなもん見てねーよ!気味悪いもん持ってくんじゃねーよボケが!」

「これだよこれ!」

Fが引き出しを開けたとこには
レントゲン写真はもうありませんでした

部屋のどこを探しても見当たりません

レントゲン写真はAちゃんとともに消えてしまったのです

Fが思い出した事実とは

Aちゃんの名前がレントゲン写真の右下に書いてあった患者さんの名前と一緒だったってこと

男の子全員にAちゃんは見えていたし
話もしたのに、合コンに来ていた女の子たちは口をそろえて「そんな子はじめからいなかった」といい張るらしいのです

レントゲン写真の名前の横には『87歳』と表記されていたそうです

一週間一緒にすごした同姓同名の女がレントゲンとともに消える

「自分たちと同年代に化けて怖がらせないようにしてくれたのだろう」とFらは話していた

その後廃病院へ行き
全員でごめんなさいを言ったそうです

−終わり−

廃墟から物を持ち出すことは良いことではありませんね
今回は優しい者だったから良かったものの

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