●怖い噺 壱


□障子の穴
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当時自分の部屋は畳と障子のバリバリの和室で布団を敷いて寝る生活だった

ある晩高熱を出して寝込んでいた自分は真夜中にふと目が覚めた
寝込んでるときって日中もずっと寝てるから変な時間に目が覚めるんだよな

当然電気も消えてるし障子も閉め切ってるから部屋の中は真っ暗
でも真っ暗な中でも、目が慣れてくるとある程度(外の明かりもあって)部屋の様子が見えてくる。そんな状態でぼーっと寝たまま障子の方を見ていた

なんだか部屋の様子が変な気がした
いつも見慣れてる自分の部屋なのにどこか違和感がある。ゲシュタルト崩壊とはまた違う、なんともいえない違和感があった

で、気づいたんだ
自分の部屋の障子は自分で開けてしまった穴が何箇所かあったんだが、心なしかその数が多いような気がした
おかしいな、こんなに穴って多かったっけ…そう思って穴の数を数えだしたんだよ

高熱で寝起きのぼーっとした頭で

明らかに普段知ってる穴の数より多かった
普段3だとしたら7ぐらいまで増えてた
さすがにおかしいだろってことでもう一回数えようとしてたら

ぶすっ

と穴が開く瞬間を見た
一瞬凍りついた。障子の外側は窓ガラスになってて当然ガラスも閉め切ってる
外から何か(誰か)が穴を開けるなんて有り得ない。混乱しながらどうすることもできずに障子を見ていると、また

ぶすっ

と別のところに穴が開いた。怖くて飛び起きようとしても高熱のダルさなのか何なのか起き上がることができない。もう障子の方を見たくない、でも背中を向けるのも怖い、どうしようと思ってたら

ずぼっ

と、一気に五箇所穴が開いた。まるで五本指をそのまま突っ込んだみたいに
そして五箇所の穴がそれぞれ下方にどんどん広がった。突っ込んだ五本指を使って障子を裂いていくみたいに

実際に障子に五本指突っ込んで下方向に裂くときれいに五本筋はできずに途中からまとまって破けてしまうのはイメージできると思うけどそのときもまさにそうなった。まとめて結構な面積が破れた

もう半泣きで、でも障子から目を背けられずにいると破れてできた大きな穴から、真っ黒い長い髪の毛が垂れてきた。もう外の窓ガラスが閉まってるとか閉まってないとかそんなことは関係なく幽霊がすり抜けて入ってこようとしてるんだと思った。髪の毛はどんどん垂れてきてもう頭が全部部屋の中に入ったぐらいになっていた。そこで意識が途絶えた

次に気がつくともう朝になっていた
無事に朝が来たことにまずほっとして次に夜のことを思い出してゾッとして障子を見た 障子の穴は無くなっていてそこでまたほっとしたが、また違和感を感じた

障子の穴が一つ残らずなくなっていた。自分で開けた普段からあった穴も全部無くなって張り替えた直後のようになっていた

不思議に思って障子をまじまじと見てみたが張ってしばらく経った若干色が黄ばんだ感じのままただ穴だけが消えていた

障子を開けてまたぞっとした。窓ガラスには手形が二つと長い髪の毛が10本程べったりと張り付いていた

親に言っても信じてもらえず障子の穴も「最初からなかった」と言われた

だけど絶対自分で開けた穴はあったはずだった

以来家を建て替えるまで寝るときは絶対に障子に背を向けて寝るようになった

幸いその夜以外には異変とか怪異はなかったが今でもどんどん障子の穴が増えていくあの光景を思い出すとぞっとする

−終わり−

穴開けても親切にもその穴を埋めて帰るなんて親切ですね…

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