●怖い噺 壱


□もっさん
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うちの病院の重症の心臓病患者の処置室にはもっさんと呼ばれるものがでる

もっさんは青い水玉模様のパジャマを着ており
姿はぼさぼさ頭の中年だったり、若い好青年だったり、痩せた女だったり様々

共通点は
部屋の隅でうつむいて立っていること
同じパジャマを着ていること
なにもしゃべらないし動かないこと

気が付くと現れ、気が付くといなくなっている

その場にいる全員に見える

もっさんが出たとき、処置中の患者は後日必ず亡くなる

亡くなった患者の処置の全例に現れているわけではなく
もっさんの現れた処置の患者は必ず亡くなるってことね

処置が成功してもなぜか予後が悪い方へと向かってしまう

もうずいぶん前から、もっさんは目撃されているらしい

お祓いの類は何度か試みたらしいがまるで効果がないらしい

年に3,4回しか現れないが、うちの科の先生やスタッフはみんな知っている

処置中、もっさんが出てもみな反応せずに黙っている
ビビるのは新人ナースくらい

若い先生なんかはもっさんを見るとひどく落ち込んでしまうらしいが
部長先生だけはもっさんが出ても、あきらめない

誰よりももっさんの姿を見ているはずなのに、このジンクスを信じていない
もっさんに魅入られた患者をなんとか救えないかと、部長先生は戦い続けている

−終わり−

病院には色々居ますからね…

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