●怖い噺 弐


□1番の宝物
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宝島を見つけようと必死で探した夏休み

川の横で知らない子が一人立って、ニコニコ笑ってる

「宝物ならこの端の滝つぼに埋まってるよ」
と、友人達しか知らない目的を口に出す少年

友人達は犯人はだれかと顔を見渡すも、皆同様に困り顔

少年はニコニコ笑いながら
「本当だよ。あそこにあるよ、宝物」
と、歌でも歌うように川の端を指す

さて、これはどうしたものかと考えあぐねるも
少年が嘘をついてるようには見えず
信じ始めた者から順にそこを目指し川を泳ぐ

少年が帰るそぶりを見せながら
「一番の宝物なーんだ?」
と、謎かけのように大きな声で軽やかにこちらへ投げかける

泳ぎながらも考えるが、考えは纏まらず

少年が聞こえるか聞こえぬかのか
細い声で何かを呟く

数人がそれを聞き引き返す

先頭の者には聞こえずか、そのまま指された場所を目指す

ボクは引き返す
少年は確かに言ったから
「それはね…」と

先頭に行った友人のうち1名死亡
1名未だに行方不明
そして身元不明の遺体1名

今年も川に花を流しに行ってきた

川の横に少年がニコニコと笑っていた

「一番の宝ものなーんだ?」
と聞かれずによかった

ボクには今、家族がいるから

−終わり−

少年が何て言ったのか
御分かりでしょうか?

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