●怖い噺 弐
□猿夢
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私は夢をみていました。昔から私は夢をみている時にたまに自分は今夢をみているんだと自覚する事がありました。この時もそうです
何故か私は薄暗い無人駅に一人いました。ずいぶん陰気臭いを夢だなぁと思いました
すると急に駅に精気の無い男の人の声でアナウンスが流れました
それは「 まもなく電車が来ます。その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ〜」と意味不明なものでした。まもなく駅に電車が入ってきました
それは電車というより、よく遊園地などにあるお猿さん電車のようなもので数人の顔色の悪い男女が一列に座ってました
私はどうも変な夢だなと思いつつも自分の夢がどれだけ自分自身に恐怖心を与えられるか試してみたくなりその電車に乗る事に決めました。本当に恐くて堪られなければ目を覚ませばいいと思ったからです。私は自分が夢をみていると自覚している時に限って自由に夢から覚める事が出来ました
私は電車の後ろから3番目の席に座りました。辺りには生温かい空気が流れていて本当に夢なのかと疑うぐらいリアルな臨場感がありました
「 出発します〜」とアナウンスが流れ電車は動き始めました
これから何が起こるのだろうと私は不安と期待でどきどきしていました。電車は ホームを出るとすぐにトンネルに入りました。紫色ぽっい明かりがトンネルの中を怪しく照らしていました
私は思いました(このトンネルの景色は子供の頃に遊園地で乗ったスリラーカーの景色だ。この電車だってお猿さん電車だし結局過去の私の記憶にある映像を持ってきているだけでちっとも恐くなんかないな)
とその時またアナウンスが流れました「 次は活けづくり〜活けづくりです。」
活けづくり?魚の?などと考えていると急に後ろからけたたましい悲鳴が聞こえてきました
振り向くと電車の一番後ろに座っていた男の人の周りに四人のぼろきれのような物をまとった小人がむらがっていました。よく見ると男は刃物で体を裂かれ本当に魚の活けづくりの様になっていました。強烈な臭気が辺りをつつみ耳が痛くなるほどの大声で男は悲鳴をあげつづけました。男の体からは次々と内臓がとり出され血まみれの臓器が散らばっています
私のすぐ後ろには髪の長い顔色の悪い女性が座っていましたが彼女はすぐ後で大騒ぎしているのに黙って前をを向いたまま気にもとめていない様子でした。私はさすがに想像を超える展開に驚き本当にこれは夢なのかと思いはじめ恐くなりもう少し様子をみてから目を覚まそうと思いました
気が付くと一番後ろの席の男はいなくなっていました。しかし赤黒い血と肉の固まりのようなものは残っていました。うしろの女性は相変わらず無表情に一点をみつめていました
「 次はえぐり出し〜えぐり出しです。」とアナウンスが流れました
すると今度は二人の小人が現れぎざぎざスプーンの様な物でうしろの女性の目をえぐり出し始めました
さっきまで無表情だった彼女の顔は痛みの為ものすごい形相に変わり私のすぐ後ろで鼓膜が破れるぐらい大きな声で悲鳴をあげました。眼かから眼球が飛び出しています。血と汗の匂いがたまりません。私は恐くなり震えながら前を向き体をかがめていました。ここらが潮時だと思いました
これ以上付き合いきれません。しかも順番からいくと次は3番目に座っている私の番です
私は夢から覚めようとしましたが自分には一体どんなアナウンスが流れるのだろうと思いそれを確認してからその場から逃げる事にしました
「次は挽肉〜挽肉です〜」とアナウンスが流れました。最悪です。どうなるか容易に想像が出来たので神経を集中させ夢から覚めようとしました
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)いつもはこう強く念じる事で成功します
急に「ウイーン」という機械の音が聞こえてきました。今度は小人が私の膝に乗り変な機械みたいな物を近づけてきました。たぶん私をミンチにする道具だと思うと恐くなり(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)と目を固くつぶり一生懸命に念じました
「 ウイーン 」という音がだんだんと大きくなってきて顔に風圧を感じもうだめだと思った瞬間に静かになりました
なんとか悪夢から抜け出す事ができました。全身汗でびしょびしょになっていて目からは涙が流れていました
私は寝床から台所に行き水を大量に飲んだところでやっと落ち着いてきました。恐ろしくリアルだったけど所詮は夢だったのだからと自分に言い聞かせました
次の日学校で会う友達全員にこの夢の話をしました。でも皆は面白がるだけでした。所詮は夢だからです
それから4年間が過ぎました。大学生になった私はすっかりこの出来事を忘れバイトなんぞに勤しんでいました
そしてある晩急に始まったのです
「 次はえぐり出し〜えぐり出しです。」あの場面からでした。私はあっあの夢だとすぐに思いだしました
すると前回と全く同じで二人の小人があの女性の眼球をえぐり出しています。やばいと思い(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)とすぐに念じ始めました…
今回はなかなか目が覚めません(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
「次は挽肉〜挽肉です〜」いよいよやばくなってきました
「 ウイーン 」と近づいてきます(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めてくれ)ふっと静かになりました。どうやら何とか逃げられたと思い目をあけようとしたその時
「 また逃げるんですか〜次に来た時は最後ですよ〜」とあのアナウンスの声がはっきりと聞こえました
目を開けるとやはりもう夢からは完全に覚めており自分の部屋にいました。最後に聞いたアナウンスは絶対に夢ではありません。現実の世界で確かに聞きました。私がいったい何をしたと言うのでしょうか?
それから現在までまだあの夢は見ていませんが次に見た時にはきっと心臓麻痺か何かで死ぬと覚悟しています
こっちの世界では心臓麻痺でも、あっちの世界は挽肉です…
−終わり−
アナタだったら活けつくりと、えぐり出しと、挽肉…どれが良いですか?
…勿論やられる側ですよ