●怖い噺 参


□ん…なんとなく
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友人の話

彼は来週にせまった山登りのために、自宅で準備をしていた
妻は毎度の彼の行楽に、少々あきれていたようにみえたが、一緒に荷造りを手伝ってくれたそうだ

登山二日目
彼は水にあたったのか、ひどい下痢に見舞われた
脱水になり疲労困憊

救急セットの中に何か使えるものはないかとあさっていると、入れた覚えのない整腸剤が入っている

服用するといくぶん楽になり、歩きだす事ができた

家に帰って、妻にその事をいうと
自分が入れたと言う

「なんとなく、必要になる気がしたの」

彼の細君は、たびたびその妙な勘の冴えを発揮し
家にいながら彼の窮地を何度も助けているそうだ

同じ友人の話

いつものように山登りの準備万端ととのえた夜
彼が地図を眺め明日のルートをおさらいしていると、玄関で物音がした

そっとドアを開けて覗くと
寝ていたはずの妻がごそごそ何かしている

「な、なにしてんの?」

「ん…なんとなく。入れといた方がいいかな〜って思って…」

寝ぼけ眼の妻が
ザックに包帯やらガーゼやら詰めていた

一体いくつ入れたのか、ザックはぼこぼこに変形し膨れ上がっている

これが必要な事態って、いったいどんな状況なんだ?

ぞっとした彼は、その登山を取り止めたそうだ

−終わり−

居ますよね…勘の良い方…羨ましい

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