●怖い噺 参


□五円玉
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冬だったので陽が落ちるのも早かった

五時くらいにはもう辺りは薄暗く、俺は友達三人と図書室で本読んでたのだが先生に帰るよう促された

ランドセルを背負い帰ろうと廊下を歩いていた時四、五人の女の子とすれ違った
俺の好きな子がその中に見えた

俺はふと三人の友達に他のクラス入ってみねない?と声をかけた

目的はその好きな子のクラスに入りたいというものだったが、友達にはそれは言わずにちょっとした探検と誘った

その頃は他のクラスに入るのをちょっとためらう傾向があったためだ

友達は結構乗り気で
「二組から順番に入ってみよう!」
とはしゃいだ

俺の好きな子は五組だったためちょっと時間かかるなぁと思いつつ二組から順番に回っていった

先生は職員室に数名残っていたが見回りには来なかった

俺達は他の教室に侵入すると机の中身を調べたりロッカーに置き忘れた物を違うロッカーに入れ替えたりして悪戯していた

そしてもう外が暗くなってからようやく五組にまで辿り着いた

その頃には友達にも飽きがきていて、なぁなぁに五組に入る

俺は好きな子の教室に入るというだけで何か特別な気持ちになっていたと思う
机の中を見るという事もしなかった

と…その時、机の上に手をついていた俺の指に何か当たった

五円玉だった

「お金だ」
という俺の言葉に教室をウロウロしていた友達も寄って来る

少額なお金とはいえそれを持って学校に来る生徒などいなかった時代だ

皆何でだろうという顔をしながらその五円玉を机の上で弾いたりしていた

その時友達がある事に気付く
五円玉を机から弾き出そうと指で弾いても落ちないのだ
磁石でも入ってるかのように机の縁でゆっくりと止まる

面白くなって俺達は指を乗せて強引に机の外に持っていこうとした
それでも落ちない

夢中になり始めていたその時だった

力を入れた訳でもないのに五円玉が指を乗せたままスーッと机の中心に移動した

それを友達に話すと「嘘だろう」と友達も試す
だがその友達でも同じ事が起きた
この時怖いという感覚は無く、ただただ不思議だった

指を乗せた五円玉はその後グルグルと机の中心辺りを動き始めた

さすがに外が真っ暗になっていたので友達が帰ろうと言い出す

皆もそれに同意し帰る事に

最後に俺はその磁石のように動く五円玉の正体が知りたくなった
五円玉自体は持つ事が出来る
とすれば秘密は机の裏か中だろうと考えた

俺は机の中に手を入れた

中には紙が一枚入っていて、それを出してみる
俺にはそれが何なのか判らなかった
だが友達の二人はそれが何なのか知っていた

「コックリさんだ!!」

二人は全部理解したようですぐさま駆け出した
俺も他の一人も駆け出した

学校から出た俺はその二人の友達にコックリさんというものの内容を聞いて初めて怖くなった

恐らくあの好きな子達もコックリさんをやっていたのだろうと推測出来た

そしてそれをちゃんと終わらせずに帰ってしまったためにまだその力が五円玉か紙に残っていたのではないかと

俺が中学に上がるまでに心霊体験自体は無かった
だが一緒に五円玉に触れた友達は一度、俺は二度触れた方の右腕を骨折した

−終わり−

子供は意味を理解せずに噂を信じ中途半端に呼び出して
帰すこともしないで自分達だけ家に帰る…

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