恋愛2

□私以外見ないでよ!!
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「……麻衣華?」

梨子は恐る恐る聞いた。麻衣華は悲しそうでも取り乱すでもなく、無表情だった。

「あたし帰る。黙って帰ったらお店に悪いから梨子は食べて帰っていーよ」


「え!?」

(ま、麻衣華ー!!!)

戸惑う梨子を背に麻衣華は店を後にした。

円に見つかる前に…

「麻衣華…?」

だが円は気づいたようだ。



(私がパスタ屋いこうなんて言ったから!!汗

どうしよ〜!
麻衣華ってちょっと気になる人できてもその人に好きな人いると一気に冷めるタイプなのに!!
麻衣華にしては珍しくアタックしようとしてたのに〜!!)

「君、」

「へ?」

自分の犯した重大なミスに青くなる梨子に話し掛けたのは円だった。

「麻衣華の連れ?」

「そ…そうですけど…」

全く動じる様子のない円にむしろたじろぐ梨子。

「か…帰っちゃいましたよ?」

そう尋ねた梨子に円は答えた。

「やきもちかな…?」







一方その頃、芽衣は…

(ちょっとどこいんのよ〜!?)

いつまで経っても現れない恋人に腹を立てていた。
というのも、待ち合わせの約束に多少のズレがあったからなのだが…

災難なことに、芽衣のケータイの電池は切れていた。


(もうっ!!なんなのよ!)

「あれ?峰岸さん?」

「ん?」

そこにいたのは見覚えのある顔…

「あー、えっとダイビング一緒の…」

「和泉ですよ」

覚えてていただけましたか、と言って笑った彼はかなり爽やかな風貌の紳士である。

麻衣華があの人よくない?と言っていたので覚えている。

「どうしたんです?
こんなところで…」

「ああ、えっと…
待ち合わせなんですけどなかなか来なくって…
携帯も電池切れちゃうし…」

「あぁ、彼氏さんですね
携帯貸しましょうか?」

「ホントですか?」

彼氏とわかってもいやな顔せず携帯を差し出す和泉に芽衣は好感を持った。

和泉から携帯を受け取り、一宮に電話する。すれ違いがあったことに気づき、新たな待ち合わせ場所を設定した。

「どうもありがとう!でも和泉さんはなんでここに?」

芽衣は出口に向かおうとする和泉の横を歩き待ち合わせ場所に向かう。
和泉はこれからダイビング生が泊まる民宿に戻るらしい。


「ええ、ダイビングのメンバー何人かとご飯を食べようということになったんですが、このホテルのレストランが観光マップにのっていたとかで…」

「へー、そうなんだぁ…」


そんな話をしていると、前方になにやらやり取りをしている男女を見つける。

「は?晴樹?」

それは一宮と、栗色の髪の毛をくるくるに巻き清楚な感じの服装をした女だった。


「最初見たときにいいなって思ってて…っ
あのっ、アドレスだけでも教えてもらいたくて…」

声優顔負けの可愛らしい声が聞こえた。

「いや、俺そういうの無理なんで…」

「あ…アドレスだけでいいんですっ…

ダメですか?」

(な…

なんだこの女ぁぁぁぁ!?)

携帯を握りしめ上目使いで聞くその女に芽衣は激しく嫌悪感を覚えた。


「あの子、ここのレストランを推してた子ですよ、もしかしてそうゆうことだったんでしょうか」

和泉が耳打ちした。

(あたしらの妨害しようってわけ?)


芽衣が一宮に話かけようとしたその時、

「え…いやでも、」

「お願いです!!」

「うぅ…

……じゃあ…」


(てめぇ!!)


「あ…ありがとう!」

ケータイを出す一宮を見て彼女は満面の笑顔で言う。

「すごく雰囲気とかが素敵だなって思って…

一目惚れしちゃったんです」

女ははにかみ気味に笑う。

「いやぁ、そんな…」

どことなく嬉しそうな晴樹。



芽衣は切れた。



「晴樹ィィィ!!!」

「峰岸さん!?」

隣にいた和泉がギョッとする。
かろうじて一宮達には聞こえなかったようだ。

「和泉さん、悪いんですけど晴樹に私は怒って帰ったって伝えてもらえます?」


「いや、彼もそんなつもりで教えたわけじゃないと思いま…」


「あれ!?芽衣!?」

振り向くと気まずそうなな顔をした一宮がこちらを見ている。

芽衣はそんな一宮をキッと睨みつけ和泉の腕をとり一宮達に歩み寄った。


「私、この人とご飯食べたんだ。」


「え?そうなの?」


アドレスについての言及がなかったので見られてなかったと思ったのか、ホッとした一宮はケロッと答えた。

その反応にまた腹がたつ。

「もういいっ!!」

「え…!?」


そう言って芽衣はホテルのドアから飛び出した。

「芽衣っ!!」

芽衣を追おうとする一宮、その後ろで和泉も走り出す。

「この辺は治安が悪いようです。僕も探します」

「……
頼む」

複雑な顔で答えた一宮。


とり残された女は不満そうに立ち尽くしていた。

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