恋愛2

□全力少女
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プルルルル

店の前で円を待つ梨子の携帯が鳴った。

「!?」

ディスプレイには杉浦の名前ー…

思わずつばを飲む。

あいにくなのか、幸いなのか、辺りはとても静かで電話をするにはもってこいだ。

ピッ

「もしもし」

『…ごめん、いきなり電話なんかして、』

「…大丈夫だよ」

顔が熱くなった。

『あぁ、えーと…』

「ごめん、ずっと返事返さないで」

『いや、それはいいんだけど…』

あれからまったく連絡をとっていなかった。
もちろん忘れていた訳じゃない。

「答えが見つからなくて」

『………』

「私はもう無理だと思って、必死で忘れたから、…あんなフられ方して嫌いになろうともしたから…

もう前と同じようには杉浦を見れない、…想えない、」

芽衣に、好きだったことを簡単に忘れられるわけないと言われた。

麻衣華に、時間なんか関係ないと言われた。

そう、その通り…
その通りだけど……


「私は、昔ほど杉浦を好きじゃなくなった」


梨子はいつだって全力な女の子だ。

『それでもいいって言っても……?』


『中途半端はいやなの』

今まで全力でやってきた。
部活も、受験も、恋もー…


『………わかった』

「………」

『村松は昔からそういうやつだったもんな』

杉浦の優しい声に泣きそうになる。

「…ごめん…」

『また好きになってくれるまで待つよ、いつまででも』

「……でも…」

『待てるよ、
だってもう三年も好きだったんだから』

涙が溢れた。

「…ぐすっ…ありがとう…」





ピッ

携帯を切る。

「おまたせ、

なんかあった?」


泣き顔の梨子に円が無愛想ながらも尋ねた。

「いえ、ちょっと嬉しいことがあって、

じゃあ行きましょうか!」

梨子は涙をぬぐって笑ってみせた。

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