恋愛?

□待っているヒト
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「ま、あたしはこんな感じだけどさ…実際麻衣華はどうなのよ?」

芽衣は麻衣華をひじでつっついた。
麻衣華は少し戸惑ったような顔をして、芽衣から視線をずらした。

「あたしは…知ってるでしょ?自分からいくとか無理だし、そもそも恋愛にあんまり興味無いっていうかさぁー。」

麻衣華は視線を泳がせながら言ったが、鋭い芽衣を欺くことはできなかった。

「麻衣華嘘ついてるでしょ!そんなわけないじゃん!!高校ん時もあんまり恋愛話してなかったけど、何か理由があるんでしょ??ねー…教えてよ?」

芽衣は数々のオトコを虜にしてきた甘い声で麻衣華に迫った。
麻衣華は梨子にはめっぽう強かったが、芽衣には同じ位弱かった。
丁度ジャンケンのように。

「ん…とさ、なんだろ…。別にホントは恋したくないなんて思ってる訳じゃ無いけどね。あたしは芽衣みたいにモテないだけだって(笑)」

「嘘!!知ってるよー?あたし高校の時の男友達多いからだけど、麻衣華にコクった人2〜3人知ってる!別に悪いひとじゃなかったのに…何で付き合わなかったの??」

「なんだ、知ってたんだ…。―…なんだろな、あたしもよくわかんないよ…信じられないののかなぁ、男が。」
「信じられないって…。そんなのわかんないじゃん、付き合ってみないとどーいう人かなんてさ?」

「まぁね。そうなんだけど、、、
私だって、その…フっちゃったヒトを嫌いだったわけでもなくて、カッコいいなって思ってたヒトなんだよね。でも、いざコクられるとなんだか『えっ?こんなに簡単に告白しちゃうの?ってかみんなにこんな風に言ってんじゃないの?』って不安になっちゃうんだよね。
自分を好きになってくれるなんて信じらんないし(笑)」

「えー…そんなことないから!ってかあるでしょソレ、トラウマか何か。」

「と、とらうま??」



ビンゴだった。
麻衣華には、忘れられない恋があった。
麻衣華は小学生の頃、よく近くの土手にペットのウサギを連れて散歩に出掛けていた。
特に好きなのは、大好きなコスモスが咲く秋のことだった。

麻衣華はコスモスの咲く土手が大好きだったが、それよりも好きなのは…
毎日土手でサッカーボールを蹴っている、一人の少年のことだった。


初めて会ったのは、まだ麻衣華が小学校4年生の頃だった。
土手でサッカーをする少年を毎日見つめていた麻衣華は、ある日サッカーボールが頭に当たり、彼が謝りに来たことがきっかけだった。

「すいません…。大丈夫でしたか…?」
彼はそう言って麻衣華の手を取って立たせてくれた。自分が見上げる身長の人と、こんなに近くで話したのは初めてだった。

麻衣華は長身でスタイルもよかったが、男の子よりはるかに高いその身長をいつもいつも気にしていた。

そんな彼女が身長を気にせずいられるのも、中学生だった少年の傍だった。

彼はおそらく学校でも無口な方で、麻衣華は彼が自分のことを話さなかったせいでほとんど何も知らない。
サッカーボール事件の後、2人は毎日目を合わせ、軽く会釈をして、1時間程一緒にいるのが日課になった。

ただ、一緒にいるだけで幸せな気分になれる、そんな人だった。

ある日、彼は突然、麻衣華の肩を抱きしめて言った。

「…好きだよ。ずっと…傍にいて欲しいんだよ…。」

彼の顔は真っ赤だった。相当照れていたらしい。麻衣華はそんな彼が小学生ながら愛しいと思った。

ずっと一緒にいたいと思った…
しかし、それから1年が経つ頃、彼に言われたのだ。

「もう…俺に会いにくんなよ。正直面倒なんだよ。」


ショックだった。その日からいくら待っても彼は現れなかった。
幼い麻衣華は、それが辛く悲しく、トラウマになってしまったのだ。





「…てなことがあったから…なのかな?別にもう気にしてないと思ってるんだけどね。」

麻衣華は芽衣に思い出を語った。

「そっか…。小さい頃のことって、結構トラウマになりやすいよね。以降『食わず嫌い』になっちゃうっていうか…。」

「そうなのかもね。ほんと、信じられる人いないのかなぁー。」

麻衣華は大きくため息をついた。

「でもさ、その彼は何で麻衣華にいきなり態度変えたんだろ?そーゆーことするようなヒトじゃないじゃん、麻衣華の話聞いてる限りでは。
何か理由があったんじゃない??」

「理由…ねぇ…。でもただ心変わりしたとしか……。」

そういえば考えたことなかった。自分が嫌われた以外の、別の理由。




麻衣華がフラれた本当の理由を、まだ麻衣華は知らない。



そして、朝日を迎える頃、2人は梨子の家を出た。

キラキラと眩しい朝日だけが、これからの3人の恋の行方を知っている。

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