宝物/捧げ物

□伝えたい言葉
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◆大切な言葉◆


本当の兄のように慕っていたお隣のがく兄に告白され、お付き合いを始めてから一年近く経った。
昔からずっと想いを寄せていた大好きな人だったから、告白された時はもう死んでもいいってくらい嬉しかった。
がく兄の側に居られるだけで凄く幸せだった。
でも何やら最近がく兄の様子がおかしい。
そう思うようになったのは俺と一緒に居る時間が極端に短くなったから。
前は少しでも時間があれば会ってくれてたのに……
もしかして気付かないうちに嫌われるような事をしちゃったのかな?
それともただ忙しいだけ?
凄く寂しかったけど、少し我慢すればまた元通りになるって信じてなるべく気にしないようにした。
でも同時に少し気になったのはリンの事。
最近、毎日のように何処かに出掛けてる。
いや、何処かにっていうのはおかしいかも。
だって俺は知ってるから。
リンが毎日何処に行っているのか。
隠してるつもりかもしれないけど見てしまったんだ。
リンが隣の家に入っていくのを。
がく兄と会っているのを。
有り得なくはない。
俺はリンが昔がく兄の事を好きだった事実を知っている。
だからがく兄と付き合う事になった時、その事を正直にリンに告げた。
隠して付き合うって事はしたくなかったから。
でもリンはその時がく兄を好きだったのは、あくまで過去の事だからって言ってた。
だけど、もしかしたら今も……。
嫌な予感を胸に抱えながらもがく兄を信じて一週間経った。


その日はがく兄と会う約束をしていた。
久し振りだったから凄く楽しみにしていた。
なのに、がく兄は約束を破った。
急な仕事が入ったって言っていたけど、同じ会社に勤めてるカイ兄は休み。
聞いてみたらがく兄も今日は休みのはずだけどって言ってた。
ケータイも繋がらない。
なんで嘘を吐くのかな。
やましい事があるから?
凄く凄く悲しかった。
そして今日もリンは出掛けてる。
やっぱりリンと何かあるのかな。
もう悪い方向にしか考えられない。
「レン君、大丈夫?」
落ち込み具合が相当だったみたいでカイ兄が心配そうに声をかけてくれた。
「カイ兄…」
「そんなに気になるなら様子、見て来たら?」
「………うん」
取り敢えず俺はカイ兄の言う通りに様子を見に行く事にした。
傷付いてもいいから真実を知りたい。
そう思ったから。


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