永遠の物語

□闇の中で嗤う僕に、されど君は微笑みかける
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「我が君」

「何だアブラクサス」

「失礼ですが、我が君はマリア・メサイアと何かご関係をお持ちなのですか?」

「何…?」




必要の部屋とスリザリン寮の丁度中間に位置するこの隠れ教室は、死喰い人達との密会に適している。
昨年 秘密の部屋を開けて以来、未だに厳しいダンブルドアの監視の目を掻い潜れる数少ない場所の一つだ。

そんなこの場所で僕の前に傅く数人の男達…。
僕の理想に賛同し、僕の配下となった者である“死喰い人”の中でも 彼等は特に優秀な手駒達だ。
純血主義の彼等は、闇に紛れ暗躍し、僕の狙い通りの働きをする。
そんな彼等からの上々の報告に頷いて散会を告げれば、その内の一人、アブラクサス・マルフォイからの意表を突かれるその問に僕は思わず眉を寄せた。




「何故マリア・メサイアとの関係を僕に問う?」




そう問返せばアブラクサスはビクリと肩を震わす。
それに更に眉を寄せれば見兼ねたオリオン・ブラックがそれに答えた。




「スキーターが…」

「スキーター?
ライナー・スキーターの事か?
あのスリザリンの面汚しの」

「はい、そのスキーターです。
アイツが我が君とマリア・メサイアが密会していると言い触らしておりまして…」

「………」

「既に奴が編集したゴシップ記事も出回っておりまして…。
我が君もご存知かと思われますがアイツの書く記事は その多くが作り話ではありますが、多少の真実も含まれているだけに…―――」

「もういい、お前達が危惧している点は分かった。
だからこれ以上スキーターの話を出すな、虫酸が走る」




忌々しい。

ライナー・スキーター。

スリザリンに居ながら品性の欠片もない愚かな男。
勝手な解釈を吹聴し、ゴシップに書き綴る目障りな存在。
しかもどこから仕入れてくるのか、その情報のネタは確かなのだから始末に終えない。




「どう致しますか?」

「我が君の許可さえ頂ければ、我々の方で始末致します」

「いや、ダンブルドアが嗅ぎ回っている以上、校内で処分する事態はなるべくなら避けるべきだ」




アブラクサスの提案に首を振って否と答えた。
殺す訳にはいかない…――だが、




「それ相応の報いは受けて貰おうか…」

「我が君?」

「指揮はアブラクサス、オリオン、お前達に任せる。
死喰い人を何人使っても良い。
勿論、露見さえしなければ一般生徒もだ。
…―――ライナー・スキーターに地獄を見せてやれ」




低く威圧を含んで告げた命令。
それに彼等は僅かに身体を震わせる。

恐怖か、歓喜か、

彼等は、僕の命令に瞬時に応える。
「我が君のお心のままに」 と。




「もう一つ気になる事がある。
そちらは僕一人で対処するが、目処がつき次第お前達の指揮を執る。
それまでは任せたぞ、アブラクサス、オリオン」

「「は」」

「僕が出る幕もない、最上の滑稽劇を期待している」




頷く彼等を一瞥し、踵を返す。
足速に向かう先は何時もの屋上。

今日は居るだろうか?
この話を知っているのだろうか?

様々な臆測に思考を巡らせる。
それでも一番に思うのは、彼女が傷付いていないか…ただそれだけだった。












































「リドル…―――」
































アーチを越えた先、またあの歌を歌っていた彼女は、僕の存在に気付き 僕の名を呼んで、ふわり…僕に笑みを向けてくれた…―――。



































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