黒猫×
□―PROLOGUE―
1ページ/1ページ
「契約せよ…」
薄暗い密閉された室内。
中央には不気味に青白く輝く、特殊な魔方陣。
それを囲む様に立っている黒いローブを纏い、フードで顔を隠している妖しい人影。
五、六人はいるだろう彼らのうち、1人の人物の、擦れた野太い声が室内に響いた。
それに習うかのように、他の人影達もまた、同じ事を口々に言い出した。
「契約せよ…」
「契約せよ…」
「汝、契約せよ…」
「我らが贄よ、契約せよ…!」
「契約せよ…」
「契約せよ…」
「汝、契約せよ…!」
室内に途切れなく響くその言葉に、1人の人物がゆっくりと、魔方陣の中央に進み出た。
魔方陣から放たれる、淡い光に浮かんだのは、二十代前半の美しい女性だった。
人影と同じく、黒を纏った彼女は、無表情に、魔方陣の中央で歩みを止めた。
途端、魔方陣からの光が強まる。
ゴォッ…と旋風を巻き起こし、まるで意思を持つ蛇のように宙を舞う光の帯。
依然聞こえる“契約”の言葉を何処か遠くに聴きながら、彼女は瞳を閉じた。
「我らが贄、汝、その名を持って契約せよ…!!」
確かに聞こえた命に、彼女は僅かに、その形の良い唇を開いた。
―我が名は…―
彼女の名が紡がれたその瞬間、青白い光が一気に黒く染まり、目を瞑る程の強烈な漆黒の輝きが、
全てを
包み、
飲み込んだ…。
.