黒崎眞弥詞1

□花魁譚
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あかく照らす蟲惑の月籬の外に
彼岸花バなびらバラ
廓の内繋がれては
病むに止まれぬ世は無情

花魁道中

高が夢然ど夢毒の日々
散りぬる紅葉
地ノ獄ハ其ノ先ニ

栄華極めし手招く影
悦眼で誘いわらう欲
くるりくるりら眩めきんず
散らし散らされ明ける夢

花魁道中

似非化粧艶の談
秘し隠しで奏で舞う
涎塗れの狗の口元に
ひらりと人差し指を付けて
煙管燻らせ蜜の囁きで
廓詞の糸を張り巡らし

仮初めの愛にみだれ媚態
石榴の果肉は憂い熟れて
ざくりと爤漫
一夜限りの契りを舐めり
貪り突く馴染みを手練手管熟し

「感情」は棄て「勘定」に欺く

魔境の誇り蠢く影
浮かべと沈み品定め
ゆらりゆらりら揺らめきんす
絆し絆され匣の中

花魁道中

似非化粧艶の談
秘し隠しで奏で舞う
現こそ夢 夢は幻
幻こそ現宵狭間
男は極楽 女は地獄
猩猩緋の鱗を身に纏いて

仮初めの愛にみだれ媚態
石榴の果肉は憂い熟れて
夜半に轟いて聞こゆるは
半鐘の音か
一層の事に総て
紅蓮に染めなして

今宵もあっちは「春」を売りんす
安堵の焔に包まれて…
捨つるは浮世の柵か

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