酒井参輝詞3

□吊
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さぁさ、首を括りあそばせ
生まれ落ちたあの日が思い出せないから
叫ぶ心の臓は偽りの無い声を上げ
向かい見つめ合うその両目は己が姿が見えているか
痛む先へ足を踏み入れ御対面

吊るし上げて喚き散らす命を乞う醜態
誇り高く翳した嘘 音を立てて崩れて行く
吊るし上げて嘔吐き散らす濡れた温もりの艶
ゆらり揺れて絞まる痛み遠退く私を引き摺り戻す朝

さぁさ、首を括りあそばせ
泣いて帰ってきた それが私の罪と罰
一度で足りぬなら二度三度と括りあそばせ
何度でも…何度でも…死んでしまえばいい

縛られぬ様に縛り付けられきつく雁字搦め
首の枷が未だ見えぬ阿保 故に雁字搦め

吊るし上げて終わらせましょう 骸から覗く日々
誇り高く翳した嘘 節穴塞ぐ目眩し
吊るし上げて始めましょう 宵が剥ぎ取られて行く
ゆらり揺れる己が骸 見つめ迎えるは今生の別れと

手繰り寄せた縄の先で微かに蟲の息を感じるから…ほら
今一度その手に強く力を込めて絞めましょう

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