酒井参輝詞3

□道化
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それは音も無く崩れて やがて慟哭で埋め尽くされ
穏やかに寄せては返す吐気の海

口を開けば溢れてしまう 針と糸で物言わぬ様に
縫い付けて欲しい 滑稽に飾り付けて欲しい

襤褸の様に朽ち果ててどれ程打ち拉がれようとも
死ねぬなら死するその日まで私は私を成そう

押し潰されて形無くした薄っぺらな私を嗤え
言の葉に泣き 言の音を鳴き 涙に溺れるくらいなら
全て飲み干して気が触れるくらいで良い
それでこそ私は道化

破顔の裏の裏の裏 嘘と真 塗りたくった
見えぬ様に見せぬ様に顧みぬ様に
私の化粧で喜劇を興じて頂けたのなら

「またのお越しを心よりお待ち申し上げます」

切り刻まれて形無くしたばらばらな私を嗤え
痛いのは嫌 辛いのは嫌 気安く触れられるのも嫌
だから滅多刺し お気の毒な兆し
それでこそ私は道化

誰も彼も望み拒み迷い惑うは性
彼れも此れも何れも其れも皆違うのが性
私が私である事 大いに嗤いましょう
いついつまでも私が私で生きて行けますように

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