海賊長編夢
□第0話 非日常の始まり
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俺の非日常は、あの日の宅急便から始まった。
ピンポーン
「はーい。どーちーらーさーまーでーすーかー…っと。」
「……はんこをお願いします。」
「はいはい、閣下の仰せのままに。」
「……」
「(いつになく無口な宅急便やな……)」
弄りがいのない反応をする目の前の人物に溜息をつきつつ印を押して荷物を受け取る。
いや、デカすぎて受け取れんかった。
「(1b×1b×1bぐらいか?)
お疲れ様ー。」
家の前に停められたトラックに乗り込む宅急便屋を確認して、段ボールの荷物を引きずりながら家の中に戻ると、すぐに蓋を閉じていたガムテープを剥がした。
『PIRATESTORY』という覚えのない名前に首を傾げながらも中身を取り出そうとして一番に出てきたのは、懐かしい中学時代を思い出す
学生服。
「何故に?」
頼んだ記憶はもちろんないが、とりあえずそれを横に置いて次の荷物に手を伸ばす。
先程と同じ布で作られたものを広げればポンチョを長くしたような、焦げ茶色でひらひらと揺れる
漫画でよく見るマント。
「だから何故に?」
これを着て何をしろと?
半ば自棄になりながら広げたマントを畳んでいれば、ひらりと落ちた白い紙に気づいて拾い上げる。
学生服の隣にマントを置きつつそれを開いて一行目に目を通した。
【喜べ。貴様は幸運にも100億人に一人の選ばれた人間だ。自分の運に感謝するんだな。】
「なんだろうこの文喜びたいのに喜べない。」
あまりにもあんまりな書き出しに思わずその紙を机の上に置いた俺は、とりあえずコーヒーでも煎れてくるかと呟いて台所に向かった。