海賊長編夢
□第0話 非日常の始まり
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ズズー、とソファに足を組んで腰掛けてカッコつけてコーヒーを飲んでみるが楽しくない。
わかっていたことだけに特に失望もせずに机の上にしばらく放置していた紙を手に取った。
【最初に一つだけ確認する。
お前はこの世界を退屈だと思っているか?】
「勿論。」
【YESと答えた者のみ読め。NOと答えた者は決して読むな。】
「はいはい。」
【さて、お前がこの世界を退屈だと感じていることは確認した。
日常を非日常に変えたいのならば、今すぐ用意した服に着替えろ。】
「服って…コレか?」
一応段ボール箱の中を確認するも、衣服らしきものはこれ以外に見つからない。
懐かしいなと思いながらも、やけにサイズの合っている学生服とマントを身につけた。
【着替えを終えたのならば、用意したトランクに荷物を詰め込め。いくらでも入るから必要最低限の物に絞る必要はない。】
段ボール箱の一番下にあったトランクを引っ張り出して開けてみる。
一見普通のトランクだが衣服等必要なものを入れ終わり、一応暇潰し変わりにと本を入れ始めてからそれが本当に特別な物だと気づいた。
かなりの量を詰め込んだのにも関わらずトランクはきちんと閉まり、重量も最初と違わずに片手で持ち運べる重さだ。
どういう原理なのだろうかと不思議に思いながらも、最後に保存していた食料を全て詰め込んで蓋を閉めた。
「で、次はー…?」
【その様子だと、準備はあらかた終えたようだな。
では次の作業に取り掛かろう。非日常はすぐそこだ。】
「非日常ねー…」
別に平凡が特別嫌だってわけでもない。
こんな子供の遊びみたいなことを信じてるわけじゃない。
結局何も変わらず、大した失望もせずに、俺はまた退屈な日常を過ごすんだろう。
そんなことを考え思わず苦笑しながらも続きを読む。
【好きな漫画はなんだ?】
「突然やなおい」
ものすごく悪いけどこの突然の話題の変わり方は流石の俺でもついていけない。
一度がくりと肩を落としてから、俺はリビングに置いてある本棚に並んでいる漫画を物色し始めた。