漆黒の蝶の魔女
□chapter.02[赤い糸]
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「……空気も悪い上に、暑いときた。百年前とは大違いだ」
我(わたし)は、架空時空世界……架空世(カリヨン)≠ノある我が家、ナイトメア≠ノ帰宅早々そう呟くように言った。
その表情たるや、もう、うんざりという表情だった。
「我は、こんな暑い現世(うつつよ)≠ネど知らぬぞ! どういうことだこれは!」
現世≠フ環境変化に、我は少し立腹していた。
「それは、都市開発のせいかと……」
イオリは、少し小声で我に助言した。
「あ、ほら。オレ様、前、テレビ? ってやつで見たぜ? こういうの、熱中症≠チていうんだろ?」
「温暖化=Aです、セト。熱中症と温暖化は全然違います」
セトの発言に、マオが的確な突っ込みを入れる。
「もうどちらでもよい……。マオ、何か冷たいものはないのか? 我は喉がからからでたまらん」
我が催促する。
「そう仰られると思って、用意しておきました。どうぞ、冷えた麦茶です」
そう言って、マオは我に、コップに入った茶色い液体を手渡す。
「……麦茶? これも現世≠ナポピュラーな飲み物か?」
「はい。喉越しがすっきりしていて、美味しいですよ」
我は少し怪訝に思いながらも、喉の渇きを癒すため、それを一気に煽る。
多分、こんなことをしているのを母が見れば、「もう少し上品に飲めないのですか」と我を咎めるに違いない。
「ふむ……、悪くないな」
飲み終えてから、イオリがふいに我に問いかけた。