短 編 集
□続・愛し愛され生きるのさ
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「………土方アァっ!」
―――声が聞こえる。
「テメーって奴ァァァっっ!」
―――どこか、遠―いところから。
「坂田っ、落ち着けっ!刀を離せっ!!」
「るせェっゴリラっ!離せっ!邪魔しやがるとテメーもぶった斬るぞっ!!」
―――この声は…銀時………と、近藤さん?アレ?なんでココに…?
「と、とにかくトシが無事だったんだ。それを幸いと思って…だ、な…」
「思えるかアァァっ!」
―――ナニを揉めて…ってチョット待てよ?前にもあったぞ、こんなコトが…。はっ!まさか俺、またナンかで死にかけたのか?冗っ談じゃねーぞ!そんなことになったら銀時がっ!今度こそ死んじまうかもしれねーだろーがぁっ!
「気持ちはわからねーでもねェが……とにかく刀を納めてくれよォ」
―――刀…!やっぱりっ!ああ銀時…早まってくれるな!今度はなんでこんなことになってんだか知らねーが、俺は生きてる!生きてるんだ!早く伝えてやらねーと…
「何言ってんでさァ近藤さん。こんな真撰組の恥っさらし…いっそ死んでくれりゃー良かったのに。今からでも遅くねェや。旦那ァ、どーぞご存分に」
―――この声は…総悟まで居んのか?っつか平然とナニ言ってくれてんだァコノヤロー!
「おぅっ!任せろ!キッチリあの世へ送ってやんぜ!」
―――………待て。ナンか話がオカシクねェか?ナンで銀時が俺を“あの世に送る”とか…違ェだろ?オマエは俺がいないと生きてられねェほど俺に惚れてて…
「そ、そーだ!坂田!トシの今月の給料そっくりお前に渡すからよっ、な?ホラ、だからっその物騒なモン離して…斬るとか、そーゆーのナシって方向で…な?な?」
「マジでかっ!ちっ、そこまで言うならしょーがねー…ホラよっ」
声とともに、ガシャン!と金属的な音が響く。おそらくは刀を投げ捨てた音だろう。
―――“給料”って……ずいぶん即物的だなオイ。ってかソレで引き下がるのかよっ!“何かオカシイ”どころじゃねェ。“オカシイ”だらけだ!いったいどーなってるんだ?こいつァ…。
目を開けようとするが、どうにもうまくいかねェ。まるで瞼が縫い止められてるみてェに動かせねェし、体も同様だ。
しばらく悪戦苦闘して、やっと目を開けることが出来た時、目の前に総悟の顔があった。
* * *
「おや。お目覚めですかィ?土方さん」
「トシ〜っ!良かった、目ェ覚ましてくれてっ!オマエ一時は心臓止まってたんだぞ?蘇生したのは奇跡だって医者も言ってて…」
「こんなバカげた蘇り方するくらいなら、俺なら迷わず死を選びますがねィ。さすがは土方さん。ツラの皮が厚いや」
「そんなふうに言うもんじゃねーよ、総悟。どんな助かり方だろうと、生きてることに感謝しねーと…」
「オイ、何があった?いったい何がどーなってるんだ?銀時は…?」
「トシ…坂田はその…アレだ、今はちょっと…」
「近藤さん、こーゆーのはハッキリ言ってやった方がいいと思いますぜィ。万事屋の旦那はもうアンタの顔は見たくねェそうでィ。近藤さんが、土方さんの給料差し出してとりなすっていう余計なマネしてくれちまったもんで、残念なことに抹殺には至りやせんでしたが…ありゃおそらく本気で斬る気でしたぜィ?…マッタク惜しいことで…斬られちまえばよかったってェのに…。あ、土方さんに伝言でさァ。『もう金輪際、俺に関わるな。ツラ出しやがったら殺す』だそーです」
「ふふん。なんだそりゃ。どーせ吐くならもっとマシな嘘にするんだな。銀時が俺を斬るなんざ、天地が引っくり返ったって有り得ねェっつーの。アイツはなァ、俺がいねーと生きてんのも嫌になるぐれェ、俺に惚れてんだぜ?くだらねェホラ吹いてねェで、さっさと現状を報告しやがれ!」
「土方さん…妄想も大概にしてくだせェよ?アンタのそのムダに豊かな想像力…いや、妄想力と、常軌を逸した絶倫さのおかげで俺らがどれだけ赤っ恥掻かされたと思ってるんでィ!」
「ぁあ?ナンだよそれ。妙な言い掛かりつけてんじゃねーぞっ」
「言い掛かりかどうか、近藤さんに聞いたらどうですかィ?まぁ今までが今までだ、俺の言うことが信じられねェってんならそれァそれで構いやせん。だけど、近藤さんの言うことはもちろん信じますよねィ?“真撰組副長”の、土方サン?」
そう言われて近藤さんを見れば、目が合うのを避けるようにして必死にあらぬ方向に視線を泳がせている。
話をする時は常に真っ直ぐ視線を合わせるアンタがなんでそんな……まさか…?
「………近藤さん?」
「や、その……」
「言ってくれ。何があった?総悟が言ってるのはデタラメなんだろう?本当は何があったんだ!教えてくれ、近藤さんっ!」
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