短 編 集

□それがアナタの生きる道A
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「ってなワケでな。普段なら占いなんぞに振り回されたりする俺じゃあねェが、今回ばかりはどうにも気になる…強いて言や“本物の匂い”がしやがるんだ。だから俺ァ行くぜ。その“運命”とやらと対面しになァ」

「しかし…!」

「心配しねェでも、即位式の日までには帰ってくるさ。せいぜい伝説のお姫さまの“この世のものとは思えぬ美しさ”に腰抜かさねェように心の準備でもしとけ。あァ、ついでに挙式の準備もな。盛大にブチかますからなァ」

「王子!」

「以上だ、万斉。それから武市!」



呼ばれたのは、策を練らせたら右に出る者はない、と先王をして言わしめた天才参謀・武市変平太。

争いを厭う先王の方針により、これまでその才は専ら政策という形で発揮されるに留まっていましたが…実は戦略の分野でこそ真の才を発揮できる男ではないかと晋助は睨んでいました。

「抜かりなく情報操作しとけよ?かの偉大なる先王の忘れ形見…幼き頃より神童と称えられし王子が伴侶として連れ帰るのは、その崇高なる心眼を以って選んだ、唯一無二の……ってオイ、聞いてんのか?」

「………王子いぃぃっ!何故でございますかアァァっ!この世に美しいものなど、あふれているではございませんかアァァっ!!よいですか王子、穢れなき幼な子こそ、無垢な魂を持つのですよっ!いかに伝説の姫とはいえ、百歳も年上の女を后としてお迎えになるなどっ…到底理解できませんっ…!王子は真に美しいものが何であるかを理解しておられないのです!何と痛ましい…そうだ、こうしましょう!この私が総力を挙げて諜報を行い、極秘裏に集めた人物ファイルがあるのです。いずれも選りすぐりの美しい者たちばかり!それをご覧いただければ必ずや王子のお心に適う相手が…」

「黙れヘンタイ。どんだけ美しかろーが、テメーが薦めんのァどーせ“ガキ”だろーがぁっ!“痛ましい”なァテメーだぁっ!だいたいテメーは…さっきの俺の話を全然聞いてねーじゃねェか!俺がその“運命”とやらを違えりゃ周囲にも累が及ぶって言ったろーが!オメーのそのささやか〜な幸せもブチ壊れるんだぜ?まぁ、オメーに関しちゃ壊れた方が世のため人のためって気もするがな」

「そんなっ……!あ…はは…いや、そ、そうでしたな…。あぁ王子…おいたわしや!よりによってそんな年増が運命のお相手とは…なんたる悲劇!しかも皆の幸福のために自らそんな年増と添い遂げる重責を背負おうとするとは何という尊き志でしょう!この武市、不覚にも涙が…っ!ですが王子…ココだけの話、正妃の他に愛妾を持つというのはままあることですからな。王子がお望みになられるのであれば、この武市がいくらでもご紹介いたしますぞ!愛らしくも純粋な、この世に舞い降りた天使の如き……うふっうふふっ…」

重度のロ○コン…そう…コレさえなければ。大変に使える男であるはずなのですが…。

こうなるともうビョーキです。しかも末期。手の施しようがありません。

「あ――……もういい、コトこの問題に関してだけは、もうテメーに口挟んで欲しくねェ。何もしねェでいいから、もう黙っといてくれ…。オイまた子!」



来島また子。この場において唯一王子と同年代である彼女は、王子の乳兄弟にあたります。

幼少の頃は遊び相手として。その後、武闘…殊に卓抜した拳銃の腕を認められ、王子の身辺警護の任に就き、多くの時間を王子と共に過ごしてきました。

数年前、王子が放浪の旅に出られる時には供としてついて行くと言ってきかず、大変な騒ぎになったものです。

あくまでも一人で行く、そうでなければ何の意味もないのだと、他ならぬ王子に強く諭され、泣く泣く同行を諦めたのですが…王子に対して乳兄弟、あるいは家臣としての範疇を遥かに越えた思いを抱いている彼女にしてみれば、王子のいない日常など拷問に等しく…旅立ったその日からずーっと、王子がお帰りになる日を今か今かと待ち侘びておりました。





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