短 編 集

□それがアナタの生きる道B
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城はすっぽりと茨の鎧を着込んだ恰好になっていましたから、日射しが遮られ中はさぞかし薄暗かろうと思っていたのですが…予想に反して城内は光に満ちていました。

しかし、蝋燭やランプなどはどこにも見当たらず、どこから発しているのかわからない不思議な光によって明るさが保たれているようです。

「どーも勝手がわからねェな…もしやこれも“魔法の力”ってわけか…?はっ…さすがは“伝説の城”、なかなかおもしれー趣向が凝らしてあるじゃねェかよ」



それにしても…亡国はよほど特殊な文化を持っていたのか、晋助の知る“城”とはまるで異なる構造をしています。

城の内部構造など大概どこも似たようなもの。王子として生まれ王宮で育ってきた自分なら、そう苦も無く姫の居場所の見当をつけられるだろう、と考えていた晋助の読みは、すっかり外れてしまいました。

「くそっ!いったいどうなってやがんだァ?この城は」

通常、どこの城にもあるはずの大広間がまずありませんし、玉座すら見当たりません。

これではどこが城の中心部にあたるのかもわかりませんし、その上やたらと狭い小部屋ばかりがたくさんあって、いま自分がどこにいるのかもわからなくなってきます。



慣れない造りに戸惑いながら、それでも目についた小部屋をひとつひとつ見てまわっていたのですが、どこにも人のいる様子はありません。はやる気持ちが苛立ちを呼び起こします。

「だいたい偉ェ奴は上って相場が決まってる。外から見た感じじゃかなり高さがあるようだったから、構造的に上階が無いはずはねェんだ。とすりゃどっかに必ず上に昇る階段があるはずなんだが…」

部屋を調べて歩き回りながら、実はずっと探していたのですが…おかしなことに上階へ通ずる階段がどうしても見つけられないのです。



 * * *



ふと疲れを感じて壁に凭れかかり、一服しようとしたその時…。

晋助が凭れていた壁の真横にぱっくりと穴が開きました!

「な、な、な……なんだアァァっ??」

驚いて飛び退いた拍子に、あのジプシーの老婆がくれたペンダントがポケットから飛び出し、穴の奥へ転がり落ちてしまいました。

「あ、やべ」

晋助は、ペンダントが落ちた先、つまり穴の中を覗き込みました。



見たままに言うのなら…正確には“穴”ではなく、それは檻のような狭さの小部屋…と言うべきでしょうか?

その辺りは確か一面カベだったように思うのですが…そこに突如として現れた小部屋。怪しいこと、この上ありません。

ペンダントはその小部屋の突き当たり部分まで飛んでしまっています。

拾おうとするなら、当然その怪しい小部屋に足を踏み入れなければなりません。

晋助がここに来るきっかけとなった水晶玉…その力を移したものだと言われたのです。きっと助けになる、と。

このまま手放してしまってはいけないように思えてなりません。

一瞬迷ったものの、結局晋助はその小部屋に入り、ペンダントに手を伸ばしました。



ペンダントを拾い上げて振り返ると…どうしたことでしょう!つい今しがた入ってきたはずの入り口が…消えているではありませんか!

小部屋の突き当たりに向かって真っ直ぐ進み、180度振り向いたのですから、当然そこには入り口がなければおかしいのですが…。

「え…?ちょっ…何なんだよっ!ナニがどーなってやがんだァ?ワケがわからねぇっ!」

先ほど自分が入ってきた、と思われる辺りには分厚い板があるばかり。押しても引いてもびくともしません。

城の他の場所と同じように不思議な光で照らされているため真っ暗ではありませんが、こんなところに閉じ込められるなど冗談ではありません。

晋助はどこか開く部分はないかとやみくもにそこら中を叩きました。

するとヴゥーンという音とともに地面が揺れ…。

「こ、今度はナンだよっ」

今まで経験したことのないような浮遊感。何事が起こったのかわからぬまま、内臓が浮き上がるような気持ち悪さに耐えていると、再度ガクンと振動した後、部屋の入り口を塞いでいた板がするすると左右に分かれました。



出られる!とほっとしたのも束の間、どうも様子が変です。

開いたのは確かに晋助が入ってきた部分なのですが、その先に見える光景がさっきとは違っているような…。

しかし、だからと言っていつまでもこの小部屋に留まっているわけにもいきません。いつまた先ほどのように急に入り口が消えてしまわないとも限らないのですから。

そろそろと小部屋から出ると晋助の後ろで低い音がして、振り向けば、たった今通ったはずの出入口が元のような壁になっています。

「はぁーん…わかってきたぜ…。一見そうは見えねェが、これは扉なんだ。どういう仕掛けになってるのかは知らねェが、勝手に開いたり閉まったりするらしいな」

辺りを見回すと、やはり晋助が件の小部屋に入る前に居た場所とは別の場所のようです。

あの振動…浮遊感…。小部屋もろとも移動した、ということでしょうか…?





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